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第34話●空族2
しおりを挟む「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。」
遠ざかって行く魔獣国の王城を見ながら空族の族長のリットは地団駄を踏んで悔しがっている。
「良かったね兄ちゃん。みんな無事に帰れて。死んじゃうかと思った。」
「何でだ、何がうれしい?ゼデ。」
「だって、あそこに居たのは伝説の災害級魔獣ばっかりだったんだよ。赤龍を半殺しにした僕達が生きて帰れるなんて奇跡だよ。しかもお土産までもらって。」
「魔獣にびびってお土産貰って追い返されたってどの面下げて空族を続けるんだ?しかも渡されたお土産が赤龍3体分の価値があるって舐められるにも程がある。」
「でででも、みんな喜んでいたよ。」
「そういう問題じゃないんだよ。」
「リット、何をいきりたっているんだ?お前には現実が見えないのか?」
ばちばちのボンテージを着こなした筋肉ムキムキの姉さんがデッキに上がってくる。
赤いロングのストレートヘアが風になびく。
鍛え上げられた強さを形にした様な壮絶な美人だ。
「クラリス姉ちゃん。俺は悔しいんだよ。怖いからって何もできないですごすごと引き下がって帰るって事が。そんな事空族にはあっちゃいけないんだ。」
遠ざかって行く王城を見ながらクラリスはリットとゼデの頭に手を置く。
「俺も思うところがないわけじゃない。だが今日の所は我慢しておけ。今のままでは勝てないからな。」
クラリスお姉ちゃん喋り方もいかついんだね。
「彼我の力の差っていうのを理解しない奴は直ぐに死んじまうんだぜ、リット。命のかけどころじゃないだろう。」
「ガキが息巻いても死んじゃおしまいだ、あの王様話しのわかる奴だったじゃないか充分儲かったしな、あれなら殺さない程度に弱らせて連れていけばまた儲かるんじゃないか?」
ベテランの空族の1人が言う。
リットが口を歪める。
「嫌がらせとしてはアリだね。」
「帰ったね。」
空を見上げてエイベルが言う。
「このままではすまないと思うわ。」
ペレペルキナが言う。
「空族はプライドが命だから。」
「腰抜けの空族に仕事を依頼する貴族も商人もいないわ。」
「何かしら一矢報いないと済まされないって訳か?面倒くさい生き方だな。」
赤龍を人化させると3歳ぐらいの女の子になった。レベルは50、名前はピボ。
ピボは何事もなかったようにけろっとしてアウザーラが渡したチョコレートを食べている。
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