魔獣っ娘と王様

第27話●いろいろやって来た。

「おっちゃん、これかわいいね。」

ターフメがミスリルで出来た魔獣のフィギュアを指差して言う。

これは置き物？
3cmぐらいのみみずのお団子みたいなものに丸い目がついている。

露店で彫金の小物を並べているまだおっちゃんと呼ばれるには若い兄ちゃんが笑っている。

「それはヒュドラを可愛くデフォルメしたんだよ。」

ヒュドラをどうすれば可愛くなるのかは疑問だし、これが可愛いかどうかは......？うーむ。

他にもいろいろな魔獣をデフォルメした置き物やアクセサリーが置いてある。

最近は錬金術師や鍛治や彫金の技術の高いドワーフも住み着く様になった。

こんな辺境がすごい変化だ。
大丈夫なんだろうか？

この異世界は基本的に進歩も変化もしない停滞した世界だ。

現状を維持するための習慣や風習が根強い。

どこの国でも、どんな職業でも長子以外は10歳前後で家を出される。

そこからは自力で生きていくのだ。

当然、食いはぐれて奴隷になってしまうか盗賊になってしまうものも多い。
そうやって変化に必要なものが淘汰されてしまう、そんな世界だ。

このドワーフも自分の里から出て独立したのだろう。

ドワーフは精霊と共に鍛治仕事をすると言われているから、精霊に引かれてきたのかもしれない。

変化が見られるのはコスタドガル帝国とヴァイグル王国、そしてここネーヴェサム魔獣国ぐらい。

従来の因習を変え、新たなビジネスチャンスを期待して人が動いている。

あるいはなんとか生きていける場所を求めて。

俺は辺境でのんびりと静かに暮らしていたかったんだが。
そうもいかなくなってしまったし、ここ以上の辺境ももうないだろう。

どこに行ってもまた同じになってしまうような気がするし。

精霊が来た事をきっかけにエルフや獣人族も来るようになった。
獣人族にとって魔獣は信仰の対象の様だ。

魔獣っ娘達と出合う度にお祈りしていたら忙しいだろうに。

ターフメとヒナが手を繋いで前を歩いている。

ターフメの方がヒナよりお姉ちゃんに見えるが魔獣はそれぞれで成長も寿命も違うので成熟度が見たまんまなのかどうかはわからない。

俺は幼稚園の送り迎えをするお父さんみたいになっている。

城の前の第広場に着くとでかい輸送用の魔導飛機がある。

エイベルが走ってきた。

「王様ー。よその王様が来た。」

「よそのおーさまってなに？」

アイゼイヤもいたのか。

エイベルが走って来た。

「綺麗な服着た人間がたくさん来た。」

「じゃ、見に行こうか。」