魔獣っ娘と王様

yahimoti

文字の大きさ
上 下
17 / 50

第17話●エルバート・サイツインガー

しおりを挟む


「皆さーんお疲れ様でーす。こちらが帝国指定観光遺産、地上の月エルバート・サイツィンガーでございます。」

ウサギ耳のガイドさんが説明してくれる。

コージが面白いところがあると言うので来てみた。

ここは辺境の水源の下流にある湖でネーヴェサム魔獣国にかなり近い。

「伝承では1362年に一度ルネリリーかカテリリーのどちらかが皆既月食になります。」

「この月が湖の中央に映り込んだ時に月の女神ジュノツマルヤが現れると言われています。」

あれ?ジュノツマルヤさんって、この間コージのダイニングでご飯を食べていたけどな?

「すごいね。ここ、湖が一望できるんだ。」

「ここ温水プールだから水着を着ないとダメだよ。」

ここは水着を貸し出ししているのでとりあえず安心。

と思ったらいきなりの全裸。

エイベルもアイゼイヤもさすが魔獣だけあって裸でも全然平気みたいだ。

神々しいぐらい普通にしている。

こっちの方が恥ずかしい。

「ここは温泉じゃなくてプールなんだから水着を着なさいよ。」

「ねえエイベルみずぎって何?」

「みずぎ?知らないわ。」

「ぷーるって何?お風呂と違うの?」

「月食は先日あったばかりなので今夜は特別プログラムの魔導投影(プロジェクションマッピング)で再現します。」

あぁ、再現ね。

この世界には月が2つある。

もとはひとつでたくさん人が住んでいたらしい。

2つに別れてからそれぞれの月が大気を維持出来なくなって人々は月の地中に住んでいると言う話しだ。

(ルネリリーとカタリリー、ちなみにこの地球の様な星はサイティカと呼ぶそうだ。)

湖面と空に浮かぶ四つの満月の金色に光る方の月が徐々にサイティカの影に入りやや赤っぽい光りを放ちながら欠けてゆく。

空いっぱいの星も月の光りのせいでかすんで見える。

月の明かりが翳り始めると星の光が力を持ち始める。

翳った月から湖面の月に向かって細い筋の様な光が降りてくる。

湖面の月が光り始める。

星の光もカテリリーの光りもその光の中に埋もれて行く。

すると湖から少し離れたところ、石のゴロゴロしていたところに巫女さんの衣装を着けたひとが5人程現れて鈴を掲げている。

シャーン、シャーンと鈴の音が鳴り響く。

厳かな祝詞の声が上がる。

やがて湖上の光は収まりゴロゴロとした石の間からルネリリーに返すように光が上がり人の姿が現れる。

「あれはジュノツマルヤに似ているけれど姉のアラステアカトネだね。」

他のツアーのお客さんが話している。

知り合い?

アラステアカトネの豊穣の祝福が終わると岩でできたステージがたくさんの魔光機(スポットライト)で照らされる。

どっかで聞いたことのある曲のイントロが始まる。

自分達が発する光が魔光機より強いんじゃないかっていうぐらいの輝きがステージの上に現れる。

ケルビム達じゃん。
何してんの?

踊っているケルビム達の中央にセラフィムとルシフェルが降臨する。

いやいや訳わかんない。

お客さん達はめっちゃ盛り上がっている。

この世界の神様的にはどうなんだろう?

1時間程のステージが終わると眩いばかりのケルビム達の光が収束していきやがて消えてしまう。

月食の終わった月が煌々と輝き、星々が満天の夜空を埋めるように煌めいている。

何万年もの過去から時を経てこの星にようやくたどり着いた星々の光が
ささやかな人々の生を際立たせる。
儚いからこそ慈しむようにと。

セラフィムの細い優しい歌声が微かに風に紛れて聞こえる。

帝国観光局の要望でアイドルユニットをやっているそうだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

処理中です...