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第13話●再会
しおりを挟むなんで、わざわざこいつらがこんな所にやって来るんだ?
俺のこの体の元の持ち主はこのコージって奴にひでーことした奴だ。
まさかコージがこんな所に来るとは想像も出来なかった。
俺がレイアンだってバレるのは非常に都合が悪い。
絶対バレる。
どーする?
コージは今では猫舌屋と言う魔道具屋と錬金工房を営んでいる。
成り行きで伯爵にまで陞爵している貴族様だ。
最近ではヘイルウッド共和国にあるソッペ・カヤ神教の神殿の近くにもお店をだした。
「ねえねえ、今日はお店休みでしょう。大草原の向こうの大山脈のふもとまで行ってみない?」
だいたいこんな事を言うのはコージの婚約者の一人、ヘルミーネお嬢様。
「ヨルマが話してたんだけど魔獣の国があるんだって。魔族じゃ無くて魔獣よ。なんか凄くない。」
ヨルマはソッペ・カヤ神教の異端審議官。
コージのところに頻繁に遊びに来るようになっていた。
勇者と暗冥の王が作ったAlゴーレムのマヨネが好奇心満点の目でヘルミーネお嬢様を見る。
「その魔獣の国の王が人間みたいなの。はじめはテイムしているのかと思ったんだけれどどうやら違うみたい。」
ヨルマが続ける。
ソッペ・カヤ神教の調査室の情報だそうだ。
この辺は(ロストヒストリーワールドDXII エンドロールの後の異世界でシリーズ「猫とAIゴーレムと僕」)を参照してもらえたら嬉しいです。
岩山の斜面に沢山の洞窟がある。
「なんだか壮観だね。魔獣がこれを作ったって思えないね。」
異端審議官の一人カメリーニが山を見上げる。
「元は古代遺跡らしいって資料に書いてあるわ。」
ヨルマがタブレットを見ている。
高出力化した新型浮動機MV2828ビークルを借りて良かった。
「おうさまー。人間来た。」
エイベルが走って来る。
「人間が何しに?ここには何にもないぞ。」
アレインが首を傾げる。
「知らなーい。観光かな?」
それを聞いたアイゼイヤが反応する。
「かんこう?かんこうって何?」
古代の遺跡に気がついたのか?
俺もこの辺境を目指して来て、たまたま見つけた横穴の奥で居住空間を広げている内に偶然見つけたのだが。
恐るべし人間の調査能力と、アレインは勝手に思い込んでいる。
まあ、でも発掘したガラクタを買って貰えるかもだな。
エイベルに何人かでガラクタを並べて土産物屋でも開いておく様に言って遠くから物好きの人間を眺める事にした。
「コージ、お土産物屋さんがあるよ。」
マリタお嬢様が走って行く。
ちょっと待って。
そのお店番の子ふつうに女の子してるけどレベル80のアラウネだし、一緒にいる子もレベル77のグリフォンだから。
見回すとここの住民ってみんな恐ろしくレベルの高い魔物が人化している。
コージは敷物の上にいろんなものを並べている二人?に話しかけようとする。
「あーあーのー、うーうー。」
コージはコミュ症なので初対面の女の子に話しかけるなんてことはできなかった。
じれったいのでヘルミーネお嬢様が話しかける。
「この街を歩いたり、見て歩くのに許可はいるのかしら。」
グリフォンの娘が首を傾げている。
「きょか?キョカって?」
「何言ってんのよアイゼイヤ。」
「だってエイベルあんたキョカって何か知ってんの?」
「ここに来てもいいかって事じゃないの?」
「もう来てるじゃん。」
「今まで人間なんて王様以外来たことないし。」
全然話しが進まない。
「じゃ、王様呼んでくればいいんじゃない。」
軽くマリタお嬢様が言うと二人ははっとした顔して言う。
「グッドアイデアね。」
「ねえねえ、ぐっどあいであって何?」
「あんたわからないのに言ったの?」
エイベルとアイゼイヤがお土産物をほっといて嬉しそうに走って来る。
魔獣に商売って無理だよな。
アンドロイドに頼んだ方がいいかな?
などと思っていると二人がやってきて「王様呼んできてって言ってる。」
とか言う。
仕方がない。
こいつらに任せて拗れても面倒くさい。
まあまあ男前だけどパッとしない兄ちゃんが来た。
ちっちゃい女の子が兄ちゃんの後をついてくる。
あの女の子も魔獣っていうか魔鳥 ロックの雛が人化している。
「えっと、王様です。何か御用かな?」
やっぱり変な兄ちゃん。自分で王様って。
「ここを見て回ってもいいですか?」
ヘルミーネお嬢様が話しかける。
王様呼びつけて直接話しをするってかなり失礼な気がするけど、この王様全然威厳とかない。
「全然問題ないですよ。ただ居住用の横穴はプライベートな所なので遠慮してあげてください。」
メインの洞穴なのか天井が凄く高い所があって横穴が沢山ある。
中央はホールって感じで奥の方には祭壇の様なものがある。
コージは王様を見てなんだか懐かしいような気がしている。
チャオは完全に疑っている。
この人レイアンにそっくり。
髪の色や目の色は変わっているけど。
原型は変わらない。
でも話し方とか目付きや物腰が完全に別人。
マヨネは魔力検知、骨格や声紋分析ですでに状況はわかっている。
ただコージに害がないので関心が薄い。
人化した沢山の魔獣達の方が興味深い様だ。
二人の魔獣っ娘がならべていたガラクタのようなものがゴロゴロ転がっている。
アルマイトのお弁当箱やアルミのフライパン、プラスチックのコップ???
何これ、この世界にあってはいけないものだと思う。
「王様、これ何?」
コージが聞くと王様が黙ってそこから少し奥の横穴を指差す。
横長のこじんまりとした横穴の上の岩盤に彫り込まれているのは「ローセブミリーマ」
前世で普通にある「コンビニ」じゃん。
「どういう事?」
「俺にもわからないけどあるもんはある。多分この世界はあの世界の遠い未来なんじゃないか?」
コージがじっと王様を見る。
この王様変な言い回しをした。
あの世界って。
「レイアン!」
呼びかける。
「ゲッ」
ばれた。
ヒナが俺の手をつかんで顔を見上げている。
「体はレイアンだけど中味は別人だね。転生者?」
コージが言う。
まあこの世界でコージなんて名前だからコイツも転生者だったって事か。
隠してもムダだな。
「俺は鈴木 輝(アキラ)ついこの間この世界に転生して来た、お前にとってはいろいろ思うところのあるこいつの体にね、前科はあるし転生先としては最低だよ。」
「絶対に会わない様にってこんな辺境で魔獣達とのんびり暮らそうと思っていたんだぜ。」
コージは言う。
「レイアンは自滅したし、輝さんは別人だし僕はなんとも思わないよ。」
「そうか、なら良かった。まあそれでも前科者には違いがない。」
ヒナが俺の前に立つ。
「王様を連れていかないで。」
コージがヒナの頭に手を乗せようとするとヒナがピクッと首をすくめる。
「大丈夫だよ。」
ヒナが顔を上げてニッと笑う。
「アキラさんあのアルマイトの鍋もらっていい?」
「この世界ではアレインと呼んでくれ。鍋でもなんでも持っていっていいよ。」
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