魔獣っ娘と王様

yahimoti

文字の大きさ
上 下
13 / 50

第13話●再会

しおりを挟む


なんで、わざわざこいつらがこんな所にやって来るんだ?

俺のこの体の元の持ち主はこのコージって奴にひでーことした奴だ。

まさかコージがこんな所に来るとは想像も出来なかった。

俺がレイアンだってバレるのは非常に都合が悪い。

絶対バレる。 

どーする?


コージは今では猫舌屋と言う魔道具屋と錬金工房を営んでいる。

成り行きで伯爵にまで陞爵している貴族様だ。

最近ではヘイルウッド共和国にあるソッペ・カヤ神教の神殿の近くにもお店をだした。

「ねえねえ、今日はお店休みでしょう。大草原の向こうの大山脈のふもとまで行ってみない?」

だいたいこんな事を言うのはコージの婚約者の一人、ヘルミーネお嬢様。

「ヨルマが話してたんだけど魔獣の国があるんだって。魔族じゃ無くて魔獣よ。なんか凄くない。」

ヨルマはソッペ・カヤ神教の異端審議官。
コージのところに頻繁に遊びに来るようになっていた。

勇者と暗冥の王が作ったAlゴーレムのマヨネが好奇心満点の目でヘルミーネお嬢様を見る。

「その魔獣の国の王が人間みたいなの。はじめはテイムしているのかと思ったんだけれどどうやら違うみたい。」

ヨルマが続ける。
ソッペ・カヤ神教の調査室の情報だそうだ。


この辺は(ロストヒストリーワールドDXII エンドロールの後の異世界でシリーズ「猫とAIゴーレムと僕」)を参照してもらえたら嬉しいです。


岩山の斜面に沢山の洞窟がある。

「なんだか壮観だね。魔獣がこれを作ったって思えないね。」

異端審議官の一人カメリーニが山を見上げる。

「元は古代遺跡らしいって資料に書いてあるわ。」

ヨルマがタブレットを見ている。

高出力化した新型浮動機MV2828ビークルを借りて良かった。


「おうさまー。人間来た。」
エイベルが走って来る。

「人間が何しに?ここには何にもないぞ。」
アレインが首を傾げる。

「知らなーい。観光かな?」

それを聞いたアイゼイヤが反応する。

「かんこう?かんこうって何?」

古代の遺跡に気がついたのか?
俺もこの辺境を目指して来て、たまたま見つけた横穴の奥で居住空間を広げている内に偶然見つけたのだが。

恐るべし人間の調査能力と、アレインは勝手に思い込んでいる。

まあ、でも発掘したガラクタを買って貰えるかもだな。

エイベルに何人かでガラクタを並べて土産物屋でも開いておく様に言って遠くから物好きの人間を眺める事にした。


「コージ、お土産物屋さんがあるよ。」

マリタお嬢様が走って行く。

ちょっと待って。

そのお店番の子ふつうに女の子してるけどレベル80のアラウネだし、一緒にいる子もレベル77のグリフォンだから。

見回すとここの住民ってみんな恐ろしくレベルの高い魔物が人化している。

コージは敷物の上にいろんなものを並べている二人?に話しかけようとする。

「あーあーのー、うーうー。」

コージはコミュ症なので初対面の女の子に話しかけるなんてことはできなかった。

じれったいのでヘルミーネお嬢様が話しかける。

「この街を歩いたり、見て歩くのに許可はいるのかしら。」

グリフォンの娘が首を傾げている。

「きょか?キョカって?」

「何言ってんのよアイゼイヤ。」

「だってエイベルあんたキョカって何か知ってんの?」

「ここに来てもいいかって事じゃないの?」

「もう来てるじゃん。」

「今まで人間なんて王様以外来たことないし。」

全然話しが進まない。

「じゃ、王様呼んでくればいいんじゃない。」

軽くマリタお嬢様が言うと二人ははっとした顔して言う。

「グッドアイデアね。」

「ねえねえ、ぐっどあいであって何?」

「あんたわからないのに言ったの?」

エイベルとアイゼイヤがお土産物をほっといて嬉しそうに走って来る。

魔獣に商売って無理だよな。

アンドロイドに頼んだ方がいいかな?

などと思っていると二人がやってきて「王様呼んできてって言ってる。」
とか言う。

仕方がない。
こいつらに任せて拗れても面倒くさい。


まあまあ男前だけどパッとしない兄ちゃんが来た。
ちっちゃい女の子が兄ちゃんの後をついてくる。

あの女の子も魔獣っていうか魔鳥 ロックの雛が人化している。

「えっと、王様です。何か御用かな?」

やっぱり変な兄ちゃん。自分で王様って。

「ここを見て回ってもいいですか?」

ヘルミーネお嬢様が話しかける。

王様呼びつけて直接話しをするってかなり失礼な気がするけど、この王様全然威厳とかない。

「全然問題ないですよ。ただ居住用の横穴はプライベートな所なので遠慮してあげてください。」

メインの洞穴なのか天井が凄く高い所があって横穴が沢山ある。

中央はホールって感じで奥の方には祭壇の様なものがある。

コージは王様を見てなんだか懐かしいような気がしている。

チャオは完全に疑っている。

この人レイアンにそっくり。

髪の色や目の色は変わっているけど。

原型は変わらない。
でも話し方とか目付きや物腰が完全に別人。

マヨネは魔力検知、骨格や声紋分析ですでに状況はわかっている。
ただコージに害がないので関心が薄い。

人化した沢山の魔獣達の方が興味深い様だ。

二人の魔獣っ娘がならべていたガラクタのようなものがゴロゴロ転がっている。

アルマイトのお弁当箱やアルミのフライパン、プラスチックのコップ???

何これ、この世界にあってはいけないものだと思う。

「王様、これ何?」

コージが聞くと王様が黙ってそこから少し奥の横穴を指差す。

横長のこじんまりとした横穴の上の岩盤に彫り込まれているのは「ローセブミリーマ」

前世で普通にある「コンビニ」じゃん。

「どういう事?」

「俺にもわからないけどあるもんはある。多分この世界はあの世界の遠い未来なんじゃないか?」

コージがじっと王様を見る。
この王様変な言い回しをした。
あの世界って。

「レイアン!」

呼びかける。



「ゲッ」

ばれた。

ヒナが俺の手をつかんで顔を見上げている。

「体はレイアンだけど中味は別人だね。転生者?」

コージが言う。

まあこの世界でコージなんて名前だからコイツも転生者だったって事か。

隠してもムダだな。

「俺は鈴木 輝(アキラ)ついこの間この世界に転生して来た、お前にとってはいろいろ思うところのあるこいつの体にね、前科はあるし転生先としては最低だよ。」

「絶対に会わない様にってこんな辺境で魔獣達とのんびり暮らそうと思っていたんだぜ。」

コージは言う。

「レイアンは自滅したし、輝さんは別人だし僕はなんとも思わないよ。」

「そうか、なら良かった。まあそれでも前科者には違いがない。」

ヒナが俺の前に立つ。

「王様を連れていかないで。」

コージがヒナの頭に手を乗せようとするとヒナがピクッと首をすくめる。

「大丈夫だよ。」

ヒナが顔を上げてニッと笑う。

「アキラさんあのアルマイトの鍋もらっていい?」

「この世界ではアレインと呼んでくれ。鍋でもなんでも持っていっていいよ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

処理中です...