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第12話●女子のお部屋
しおりを挟むずーっと岩が転がっているだけの荒野を岩の上にすわって日向ぼっこしている。
今日は風もないので砂埃が上がらないせいか空が青く澄んで見える。
ヒナは膝の上で寝ている。
静かないい日だね。
日常ってこんな感じだよね。
なんか急に空が翳って来た。
ズダーン
雨でも降るのかと思ったらでっかいうねうねしたものが落ちて来た。
めちゃくちゃ砂埃が上がる。
うねうねが近づいて来る。
ヒナが俺の前に立って身構えている。
ちっちゃい子に庇われている兄ちゃんって感じ。
実際ヒナの方が圧倒的に強いから仕方ない。
鑑定してみるとレベル150のヒュドラ、 ターフメって名前らしい。
状態は、.....空腹かいな。
「王様、金貨。」
ヒナが言う。
いつもの様にエリミリア金貨をかざす。
この金貨に含まれるソロモンの石の粉末は別名で賢者の石とも言われている錬金術師が垂涎の伝説級の希少な物質らしい。
それが俺のジョブとどう反応しているのかはわからないが、金貨自体が何も変わらない所を見ると触媒のような働きをしているのだろう。
金貨とヒュドラは同時に光り始める。
うねうねした何尾かの蛇の塊のような姿から15歳ぐらいの女の子の姿になる。
インベントリから服をだして服を渡す。
ターフメはちょっとためらってからヒナの様子を見て服を着た。
そんな習慣ないだろうし。
「なんかちょうだい。」
ターフメが言うのでとりあえずあんぱんを食べさせてヒナと一緒に温泉に行く。
汚れを落とすときれいな子、まあ、みんなそうなんだけど。
その間にエイベルとアイゼイヤに言って、カレーライスを用意する様にアンドロイドに頼んでもらった。
ターフメの部屋が出来る迄とりあえずアイゼイヤの部屋に入れてもらった。
なんだか意外。
どこから集めて来たのかテーブルやベッドがあって、床にはカーペットのようなものが敷いてある。
何かは良くわからない置き物なんかも並べてあって女の子っぽい。
「おーさま、なんか失礼。」
アイゼイヤがつぶやく。
なんでわかった?
じきにアンドロイドがぷりぷり怒りながらカレーライスを持って来る。
「電子レンジみたいに使うのはやめてほしいわ。」
そう言いながら一緒に食べ始める。
「コンビニの奥のアンドロイド達がいた所あたりに行くといろんなものが落ちているの。みんないろいろ集めて部屋作りしているわよ。」
エイベルが言う。
そうなのか?
遺跡から出て来るものなんかこの世界ではオーパーツみたいなもんだから高く売れるかも。
そうしたら商人を呼んで取引して、この子らにいろんなものを持たせたり、おやつを食べさせたりできるかな?
はっ、俺はこいつらの親父か。
何故かそんな気にさせるよなー。
俺見た目は19歳だけど中味34歳だしなー。
こいつら人間より素直で純粋だしな。
ターフメのお腹が満ちたようなので話しを聞く。
ここから西に2000kmぐらいの大荒野の端の方で暮らしていたそうだ。
帝国が資源開発をやっていて大きな露天堀の鉱山を作ったらしい。
そのせいでステップリザードやサンドワーム、スタースコーピオンが激減してしまったそうだ。
人間にとっては安全になっていいんだろうけど、それをごはんにしていたヒュドラにとってはたまったものではない。
結界石はあるし、勇者の気配もあって暴れることもできないし。
まだこの辺は人の手も入らないし、ごはんになる魔物は豊富だ。
ターフメもそうだがアイゼイヤやエイベルが言うにはここには魔獣達にとって心地よい波長の魔力が満ちているらしい。
それからこの場ではそれぞれの魔獣が持つテリトリーの距離感が喪失するらしい。
古代遺跡が関係しているのだろうか。
ターフメはこのテリトリーを避け食料を求めてここにたどり着いたようだ。
まだ何体かはやって来るそうだ。
まあここは洞窟がたくさんあるから隠れ住むにはいいからね。
アイゼイヤとエイベルがターフメを連れて部屋になる洞窟に案内している。
ザウアーラが荷物をいっぱい抱えて古代遺跡のある洞窟から出て来た。
俺を見つけて走って来る。
「王様ーっ。今日はね、きれいなものを見つけたの。これねー。透き通っていてピンク色してるでしょう。お部屋に置いたらかわいいと思うのー。」
ワインか何かの瓶を拾ってきた様だ。
パッと輝くような笑顔を見ていると何も言えなくなる。
「そうだね、きれいだね。」
なんとかそう答える。
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