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第117話●あなたの世界
しおりを挟むガイドの猫耳のニジさんが話し始める。
「皆さーんお疲れ様でーす。」
「こちらが帝国指定観光遺産、地上の月エルバート・サイツィンガーでございます。」
「今夜は月の一つルネリリーがサイティカの陰に入る皆既月食になります。」
「伝承ではこの月が湖の中央に映り込んだ時に月の女神ジュノツマルヤが現れると言われています。」
はあー。
マルヤここにいるし。
別人?
いや別神?
「あぁ月の満ち欠けや夜に出て来るからって死と再生の女神って呼ばれてたわね。」
「月じゃなくて洞窟でお腹痛くて唸っていたじゃないか。」
「伝承だからね。」
「すごいね。この大浴場、湖が一望できるんだ。」
「ここ温水プールだからパンツ履けよ。」
ユウトが言う。
「大丈夫リアム王子小さいから問題なし。」
リルが言う。
「うるさい、小さくないぞ。」
リルが鼻で笑いながら言う。
「ふん、小さくないなら早くパンツ履け。」
湖面と空に浮かぶ四つの満月の金色に光る方の月が徐々にサイティカの影に入りやや赤っぽい光りを放ちながら欠けてゆく。
空いっぱいの星も月の光りのせいでかすんで見える。
月の明かりが翳り始めると星の光が力を持ち始める。
翳った月から湖面の月に向かって細い筋の様な光が降りてくる。
湖面の月が光り始める。
星の光もカテリリーの光りもその光の中に埋もれて行く。
すると湖から少し離れたところ、石のゴロゴロしていたところに巫女さんの衣装を着けたひとが5人程現れて鈴を掲げている。
シャーン、シャーンと鈴の音が鳴り響く。
厳かな祝詞の声が上がる。
やがて湖上の光は収まりゴロゴロとした石の間からルネリリーに返すように光が上がり人の姿が現れる。
「あれ?アラステアカトネじゃん。」
ジュノツマルヤが言う。
「誰?それ。」
「お姉ちゃん。」
アラステアカトネが手を振っている。
祝詞の終わりと共に鈴の音も絶えた頃、光りも収まりそれと共に女神の姿も消える。
拍手喝采だ。
観光資源としては大成功。
ユールはこのプランはなかなか行けると自画自賛した。
やっぱり旅の計画は楽しい。
アラステアカトネが温水プール用の水着を着てやってくる。
「ジュノツマルヤ久しぶりね。」
「お姉ちゃん何してんの?」
「アルバイトよ。コスタドガル帝国の観光局に頼まれたのよ。」
「これって観光用の演出なの?」
「何言ってんのよ、本来はマルヤが登場して世界を祝福するのよ。」
「祝福?私が?」
「そうよ、死と再生は豊穣を示し、約束するのよ。」
「カトネは月から来たの?」
ユウトが聞く。
「そうよ。光りに乗って来たのよ。」
「月って何にもないんじゃないの?ムートが言ってたよ。」
「表面にはもう何もないわ。」
「月が2つに分かれて大気を維持できなくなるまでに月の民は地下に降りたのよ。」
「今、月の中は空洞になって生活圏が出来上がっているわよ。」
ムートは表面の昔の遺跡で寝ていたのね。」
なんかもうなんでもありだな異世界。
「それでね、この間とんでもない強さの魔力が衝突して穴が空いて大変だったの。」
「軌道は不安定になるしね。」
「かろうじて誰も住んでいない地域だったしなんとか補修したけど、びっくりしたわ。」
アラステアカトネが迷惑そうに言う。
「あんな魔力どこから来たのかしら。」
ユウトが青い顔をしている。
一回図に乗ってぶっぱなした魔法にずっと祟られている感じ。
ごめんなさい。
もう調子に乗りません。
リアム王子はなんだかわからないけれど少し気分が良くなった。
ゲームとしてのストーリーが終わっていても世界が終わるわけじゃない。
たくさんのNPC(ゲームの中でプレイヤーが操作しないキャラクター 達)がこの世界の住民として生活している。
そしてそれぞれのキャラクターには彼らを主人公としたストーリーがある。
無数の人々の無数のストーリーが続き、広がっていく。
メインストーリーはあなたが決めたらいいんだよ。
じゃ、また。
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じじぃだからか、ハーレムになりそうな周りを微妙にかわしてるのか かわせてない(物理的に力量差?(笑))なのかわからん辺りにジレジレしつつ ハーレムして無いのを嬉しく思ってますw
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もっともっと冒険して欲しいですwww ←本人は引きこもり気質みたい(ワタスもなんで よくわかるんだがwww) だが チートなんで周りが許さんだろうから 冒険 楽しみにしてまーーーーーすヽ(*´▽)ノ♪
感想を書いていただきましてありがとうございました。嬉しいです。