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第116話 月の遺跡2
しおりを挟む宿泊や食事には街道のあちこちにある帝国観光事業局が運営する旅館やホテルを利用する様にプランが組まれている。
ちゃんとその土地ならではのお土産物屋さんにも立ち寄る。
旅行気分満点だ。
リアム王子はソーセージを焼いた物をフォークで付きさしてボーっとユウト達を見ている。
この世界では勇者がいるって事だけで国家間の軍事的な衝突は起こらない。
武力を行使したり、侵略を行う国は即座に勇者が滅ぼしてしまうと各国の王が思い込んでいるからだ。
それなら国の王など要らないんじゃないかと思ってしまう。
勇者がこの大陸全部をまとめて統治すればいいんだ。
「せっかくの旅なのにうかない顔ね。」
ルチアナが話しかけて来る。
「ルチアナは皇帝なのに王国の貴族の邸で遊んでいて問題はないのか?」
リアム王子は問いかけで答える。
「国には執権のエイドガーがいるわ。私がどこに居ようと問題ないし。」
「簒奪とかは考えないのか?」
「エイドガーはそんな事に興味を持っていないし、べつに皇位なんかあげてもいいのよ。」
コスタドガル帝国は技術産業大国になった。
あっという間に世界は変わった。
コスタドガル帝国は豊かな国になったし王国も、おそらく他の国もそれに引きずられる様に豊かになった。
そしてそうなったのは勇者ユウトのせいだと言われている。
ユウトが人化して小さくなっているフェンリルを膝に乗せて撫でている。
なんだかすごく自由で楽しそうに見えてそれに腹が立って来る。
「勇者が居れば国なんか要らないんじゃないか?」
ルチアナに向けた問いかけなのだがちょうど大聖女エリミリアが通りかかった。
「あーははは。ユウトが施政なんかしないわ。」
あー、そのお肉僕が食べようとしてたのに。
エリミリアは容赦なく焼けたお肉の良いところをパクパク食べてしまう。
だいたい食っちゃ寝の繰り返しだった。
ユウト達はお土産物屋に着く度になんでも面白がって買ったり、食べたり。
旅行を満喫している様だ。
おーっ ここが王国指定観光遺産地上の月エルバート・サイツィンガーか。
なんもないな。
大きな石がゴロゴロして並んでいる。
昔は何か構造物があってそれが壊れたって言う感じ。
まあそれでも近くにきれいな湖もあるし、お土産を売っている露店もたくさん出ていて観光地ムード満点。
かっこいいリゾートホテルもある。
ユウトが飛び上がって遺跡を見下ろしている。
ユウトに聞いてみる。
「月とのつながりって感じたりするの?」
「全然。」
そっけない。
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