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第115話 月の遺跡1
しおりを挟む「うわあ。父上がぶったー。」
リアム第一王子が泣きべそをかいている。
そりゃ王様に向かって王になんかなりたくないなんて言えばゲンコツの一つももらうだろう。
なんでこいつが僕の所に来てべそをかいているのかは腑に落ちんがまあこいつにどうこう言えるような立場でもない。
自分で望みもしない将来があって、それが義務とまで言われてしまう可哀想な子供。
それでもこいつはまだついている。
ガチャでいえば星4つぐらい。
王様の子だから生きていく事には苦労がない。
生まれながら、すぐにでも死んでしまいそうな境遇の星1や星2って奴もいる。
理不尽過ぎてばかばかしくなる。
だから僕は他人に努力しろとか向上心を持ってスキルアップしろとか全然言えない。
ユールはただ勇者の血筋だと言うだけで特別扱いされ、のうのうと生きている自分を知っている。
だからその境遇を最大限に活かして面白おかしく生きることにした。
尊大に成らず傲慢にならない様に。
何もしなくても尊大で傲慢な存在なのだから。
何か面白いことでこの可哀想な王子を楽しませてやろうとユールは考える。
この魔飛バスと言うのは快適じゃのう。
客車は接地していないので路面の凸凹を拾わないので揺れない。
あえてフォレストサラマンダーに引かせているのも速すぎず、また静かで良い。
ユウトと3神獣とマルヤにペトロそしてレティシアがついて来ているのはセキュリティシステムみたいなものだ。
機嫌良くしていればそれだけで無敵だからね。
ルチアナとエリミリアまでついて来ているのはもうなんか分からん。
「この度はユール遠足観光をご利用頂き誠にありがとうございます。」
ユールの従者の猫耳さんが挨拶を始める。
うさ耳さんはフォレストサラマンダーの相手をしている。
「今回の目的地は帝国指定観光遺産 地上の月エルバート・サイツィンガー。」
「ご案内は私、ニジとうさ耳のペツ。」
「14日間の旅となります。よろしくお願いします。」
昼食は街道にある道の駅「オークの靴下」でバーベキューだそうだ。
「ペトロはエルバート・サイツィンガーのこと知っているの?」
「あんまり、大昔月との転移陣があって交流があったとか言う都市伝説みたいなものぐらい。」
「ムートは月のどこにいたんだ?」
「石で出来た家みたいなのがあったよ。ユウトが魔法で吹き飛ばしたけど。」
「げっ」あの一発の魔法がえらくいろんなことに響いてんな。
「相変わらずだな。」
とペトロは言うがわしは1000年前のゲームクリア後の勇者の事は全然知らんぞ。
わしはゲームクリア後もしつこくダンジョンを回ったり、同じクエストを何回も繰り返して楽しんではいたが、その内ゲームをしない様になった。
あのゲームとこの世界が関連していたとしてもその後の世界にわしはいないはずなんじゃ。
NPCになった勇者のキャラクターがわしの代わりにいろいろしでかしたのか?
あるいは本当に忘れてしまったのか?
マルヤがわしの頭をポンッと叩く。
「考えても分からんことを気に病んでどうする。今は今を楽しめばいいんじゃ。」
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