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第94話 邪神ジェノツマルヤ5
しおりを挟む城塞に転移してすぐに状況は理解できた。
うなり声の様な音が断続的に響く。
それが山々に反響しているのでどこが音の発生源なのかわからない。
うおーんうおーん
あまりにやかましいので魔物もこの付近にはいなくなってしまったようだ。
仕方がない。
わしはマップを開いて探索を始める。
山の中腹にある洞窟の中に強力な魔力を持つものがいる。
これは普通の人が近づくと死んでしまうかもしれないのでユールには一旦城塞に戻って待機する様に言う。
「はーい、ご先祖様。」
「はーい、おじいちゃん。」
ユールとペルキナが声を合わせて返事をする。
良い子じゃ。
わしはマップの光点に向かってダイレクトに転移した。
暗い洞窟の中をうおーんうおーんっと音が響いている。
この地域は地下に縦横に洞窟が広がっている。
前世にあったカルスト地形のようにになっている様だ。
魔法で灯りをつける。
鍾乳石が柱の様に立並び壁面は水晶の様な結晶が覆う様に出来ている。
観光資源になるのう、などと思っていると、この騒ぎの原因が転がっておった。
わしと変わらん位に見える子供が転がったままうんうんとお腹を抱えて唸っている。
ボロボロの布で体の隠した方がいいところをかろうじて覆っているぐらい。
髪も肌も真っ白では頭に角がある。
妊娠している訳ではなさそうだ、ちっちゃいし。
鑑定すると消化不良の様なのでヒールをかけてやる。
すると子供はムクリと起き上がるとターっと洞窟の奥の方に走り去った。
洞窟の奥からは女の子が発する音としては表現の好ましく無い音が大音量で発せられている。
しばらくすると子供が戻ってくる。
少し顔が赤い。
「いろいろ聞こえちゃった?」
気にするんだ。
「いや,ぜんぜん。」
「嘘つきさんね、優しい嘘つき。」
子供はいっそう顔を赤くしている。
「助かったわ。わたしずっとここで眠っていたの、多分この世界が出来て間もない頃から。」
「いつもは時々飛んでくる魔物の魄を食べて浄化してきたのだけど最近馬鹿みたいに大量の魄が押し寄せて来るものだから浄化しきれずに苦しんでたの。」
それわしのせいじゃないか?
あのパワーレベリングの。
まあこれは黙っておく事にしよう。
「わしはユウト。あんた邪神って言われているけど?」
「勇者のユウトね、まあそうでもないとここまで近づくことはできないしね。邪神?まあ邪神って言われればそうかもしれないわね。わたしはジェノツマルヤ元はこの世界の死と再生を司る神よ。」
グーッとジェノツマルヤのお腹がなった。
「あははっ、浄化したらお腹すいて来ちゃった。」
わしもお腹が空いて来たのでテーブルと椅子を出してカレーを食べさせる。
ジェノツマルヤは目をピカピカさせて
「美味しい。」
と言いながら3杯食べた。
大丈夫か?
食後にデザートのプリンも出した。
ジェノツマルヤも落ち着いた様だし、問題は解決という事で帰ろうかな。
「じゃ、元気でね。」
と言うと,ぎゅっと抱きつかれた。
「マルヤ、ユウトに着いて行く。」
と言う。
カレーとプリンに釣られたのか。
まあ神とはいえこんな所に女の子置いて行くのはちょっとね。
ジュノツマルヤにはインベントリからリルの服を出して着てもらう。
いろいろ見えちゃうから。
仕方がないのでまず、ダリオスの城塞に行ってユールとフィリップに説明する。
「あ、女の子お持ち帰りしてきた。」
「またか、」
ぐらいの反応。
「勇者だし。」
一件落着じゃな。
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