転生勇者の異世界見聞録

yahimoti

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第88話 王国筆頭魔法師クリムロンタ3

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ミーシナ王妃は上機嫌だった。

久しぶりに彼女の部屋にやって来た王はソファーにもたれてぐったりしている。

娘達のことで大聖女に相談に行って追い返された様だ。

彼のせいではないがこの大陸の国家は平和のためにとか理由をつけ、お互いのつながりを強くする為に娘達を政治の道具として嫁がせる。

王女も例外ではなく、いずれ政略のために嫁がされる。

それも小さな頃からそれが王族や貴族の女子の役割だと躾られ、自分でもそう言うものだと思い込む。

まるでそれに従う事が自分の幸せかの様に。

だけど勇者は娘達に力を与えた。

それも生半可ではない大きな力、王はこの娘達をどう扱っていいのかわからない。

王もまた、娘をどこか都合の良いところに嫁がせるのが娘の幸せだと思い込んでいるから。

元々それが目的で勇者の所に三人を近づけたのだ。

誰か一人でも勇者の気を引いて勇者の血を王家に入れられれば良いと。

しかし勇者は王やその側近の意表を突いた。

ミーシナ王妃は大笑いしたいぐらいだ。

本人の意思と関わりなく王家の都合の良い所に嫁に出されるぐらいなら、ずっと勇者の近くで遊んでいればいいのだ。

勇者もまだ小さな子供だし急ぐことは何もない。

リアム王子もまた上機嫌だ。

妹達が優秀なら自分が王にならずに済む。

ずーっとダラダラ暮らすか冒険者になれるかもしれない。

父クライアス王には悪いが俺に変わりは出来ない。

そうだ、ルデリーナが王女をやればいいのだ。

俺は来年から騎士学校に入る。

3年程劣等生ですごせば父も諦めるだろう。

なんだか楽しくなってきたー。

珍しくユウトが王女達と遊んでいる。

「どーだ、ちっこいリルだぞ。」

王女達の人形の街のそばにリルの人形を登場させている。

街の中に登場させると街が壊れちゃうからね。

王女達は自分に似せた人形をリルにのせる。

ユウトは街の周りをミニチュアのリルに走り回らせる。

「ユウト、勇者を作ってよ。」

とクーラウが言う。

勇者か、見た事無いしな。

あれかなゲームでキャラメイクしたやつ。

すると最近良くロイス邸に来る様になった王国筆頭魔法師クリムロンタが作らせてと言って来たのでおまかせする。

「男前じゃな。」

クリムロンタの作った勇者の人形は細身の兄ちゃんで一見女性の様に見える。

全然強そうじゃない。

「クリムロンタは勇者を見た事があるのか?」

「王宮の奥に勇者の部屋があるんです、そこに肖像画がありましたよ。」

そんな部屋があるんか?

長い事留守だろうに無駄じゃな。

「やっと形だけは作れるようになりました。」

嬉しそうに笑っている。

これが作りたくて度々ここに来て王女達を見ていたのか。
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