88 / 117
第88話 王国筆頭魔法師クリムロンタ3
しおりを挟むミーシナ王妃は上機嫌だった。
久しぶりに彼女の部屋にやって来た王はソファーにもたれてぐったりしている。
娘達のことで大聖女に相談に行って追い返された様だ。
彼のせいではないがこの大陸の国家は平和のためにとか理由をつけ、お互いのつながりを強くする為に娘達を政治の道具として嫁がせる。
王女も例外ではなく、いずれ政略のために嫁がされる。
それも小さな頃からそれが王族や貴族の女子の役割だと躾られ、自分でもそう言うものだと思い込む。
まるでそれに従う事が自分の幸せかの様に。
だけど勇者は娘達に力を与えた。
それも生半可ではない大きな力、王はこの娘達をどう扱っていいのかわからない。
王もまた、娘をどこか都合の良いところに嫁がせるのが娘の幸せだと思い込んでいるから。
元々それが目的で勇者の所に三人を近づけたのだ。
誰か一人でも勇者の気を引いて勇者の血を王家に入れられれば良いと。
しかし勇者は王やその側近の意表を突いた。
ミーシナ王妃は大笑いしたいぐらいだ。
本人の意思と関わりなく王家の都合の良い所に嫁に出されるぐらいなら、ずっと勇者の近くで遊んでいればいいのだ。
勇者もまだ小さな子供だし急ぐことは何もない。
リアム王子もまた上機嫌だ。
妹達が優秀なら自分が王にならずに済む。
ずーっとダラダラ暮らすか冒険者になれるかもしれない。
父クライアス王には悪いが俺に変わりは出来ない。
そうだ、ルデリーナが王女をやればいいのだ。
俺は来年から騎士学校に入る。
3年程劣等生ですごせば父も諦めるだろう。
なんだか楽しくなってきたー。
珍しくユウトが王女達と遊んでいる。
「どーだ、ちっこいリルだぞ。」
王女達の人形の街のそばにリルの人形を登場させている。
街の中に登場させると街が壊れちゃうからね。
王女達は自分に似せた人形をリルにのせる。
ユウトは街の周りをミニチュアのリルに走り回らせる。
「ユウト、勇者を作ってよ。」
とクーラウが言う。
勇者か、見た事無いしな。
あれかなゲームでキャラメイクしたやつ。
すると最近良くロイス邸に来る様になった王国筆頭魔法師クリムロンタが作らせてと言って来たのでおまかせする。
「男前じゃな。」
クリムロンタの作った勇者の人形は細身の兄ちゃんで一見女性の様に見える。
全然強そうじゃない。
「クリムロンタは勇者を見た事があるのか?」
「王宮の奥に勇者の部屋があるんです、そこに肖像画がありましたよ。」
そんな部屋があるんか?
長い事留守だろうに無駄じゃな。
「やっと形だけは作れるようになりました。」
嬉しそうに笑っている。
これが作りたくて度々ここに来て王女達を見ていたのか。
0
お気に入りに追加
383
あなたにおすすめの小説


貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる