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第62話 カニツアー5
しおりを挟む「で、アサンがカニを食い尽くしたんか?」
「そんな訳ないでしょ。いくらなんでもそんなに食べられるわけないよ。」
「いっぱいいるよ。」
それじゃなんで漁師に獲れんのじゃ。
「見に行く?」
面白そうじゃな。
アサンがプクーっと泡の玉を吹く。
大きくなってみんなを包み込む。
「このまま行くのか。」と、こういうことにはびびりのマッテオの腰は引けている。
魔物相手だとバカみたいに飛びかかっていくのに。
重力だとか気圧だとかの理屈を無視して泡の玉は水中に沈んで行く。
「きれいね。光が水面の波の動きにきらめいて海底に差し込んでいるわ。」
まだ浅いところなので光が行き渡って明るい。
泳ぐ魚の彩りもきれいだ。
水深が深くなるに連れて薄暗くなってゆく。
だんだん魚の姿も減って行く。
「なんだか不気味ね。」
巨大な白いものが近づいてくる。
でっかい目玉がギョロリとわし達を見る。
クラーケンじゃな。
イカ焼きにしたらうまいかな。
「あれは私の従者なので食べないでね。」
ってアサンが言う。
すぐにバレた。
クラーケンは先っぽの太い2本の足を手のように振ると離れて行った。
大陸棚の様なところに着底した。
「なーんにもいないね。やっぱり食べちゃった?」
とユリアンナが聞く。
「その棚の端から下を見て。」
とアサンが言う。
一つ下の海底にうじゃうじゃとカニがいた。
それも海底の見渡す限りいっぱいに。
「前はこの棚にもいっぱいいて漁師が獲っていたんだけど、少し前に月の引力が少しの間変わった時があって棚がずり落ちたの。」
「その時にカニも一緒に落ちたのよ。漁師の網はそこまでは届かないみたい。」
そんな事起こるんか?
で、わしか?わしのせいなんか。
わしがなんとかせんといかんのかー。
「この棚の上にカニを持って来れんのか?」
「クラーケンに運ばせられるけどー。ずーっとは無理ね。あの子たちすぐに飽きちゃうから。階段でもつけたら自分で上がって行くんじゃないかしら。」
と言うわけでわしは土系の魔法で大陸棚に階段を作りとりあえずクラーケンにカニを追いたててもらった。
ついでにカニを何杯か捕まえて海岸に戻った。
漁師達にカニが獲れることを伝えると疑うこともせずに漁に飛び出して行った。
カニを旅館のご主人に渡して料理してくれるように頼んだら喜んで厨房に走って行った。
とっても素直でせっかちじゃな。
さんざんカニを食べたのじゃ。
満腹じゃ。
カニすき、やきガニ、カニの作り、
カニみそ、カニの炊き込みご飯。
フルコースじゃった。
そして旅館と言えば大浴場、露天風呂じゃ。
アサンがお風呂ですいすいと泳いでいる。すっと上半身をもたげた姿が美しい。
「きれいじゃなーアサンは。」
アサンが顔を赤くして照れている。
アサンの頭を撫でるとムートもリルもわしに頭を向けてくる。
人の姿はしていてもペット達は邪心がなくて素直でかわいいもんじゃ。
「あれ、マッテオとタピタは?」
「男湯に決まってるじゃない。」とレティシアが答える。
「えっ、ここは?」
「女湯よ。あんた知らなかったの普通にノコノコついて来たのよ。」
日頃が日頃なので無意識にレティシアについて来てしまった。
「あんたはちっちゃいんだからいいのよ。」
そう言う問題か?
「ユウト頭洗ってあげるからしっぽ洗って」とムートがわしを抱える。
私も私もとリルもアサンもわしの手や足を持つ。
「あんた達ちゃんと洗いなさいよ。」
とレティシアが笑っている。
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