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第60話 カニツアー3
しおりを挟むと言うわけで猫耳しっぽ亭に来た。
「あれはカニカマだにゃ。ここら辺では獲れないから出回らないんにゃ。」
と猫獣人族の親父が言う。
「カニは美味しいにゃ。昔食べたことあるにゃ。隠居した貴族や商人がカニ食べ馬車ツアーで2ケ月ぐらいかけて出かけるにゃ。」
そりゃ豪勢じゃな。
「最近は帝国の旅行社が転移魔法を使って日帰りや1泊ツアーを始めてお手頃になったらしいにゃ。」
エイドガー宰相は頑張っているみたいだ、なかなかやるね。
「えー、ムートに乗って行くの?」
マッテオは高い所が怖いんだ。
「この前に乗って慣れただろう。」
「慣れるもんか、しかも今度はもっと遠いから長い時間飛ぶんだろう。」
「無理だから。ユウトの転移魔法で行けばいいじゃないか。」
そんなこと言うとムートが拗ねるぞ。
ムートが涙目になってわしを見る。
「マッテオ、ムートいじめた。最低。」
ユリアンナが言う。
「マッテオ大丈夫怖くない方法がある、ちょっとこっち来て。」
「え、なになに。」と不用心に顔を近づけてくる。」
わしは素早く優しめのデコピンをしてあげる。
マッテオがへたーっと気絶する。
タピタがうわあと言う顔をして見ている。
「今のうちに乗せちゃえ。」
ムートに人化を解かせてみんな乗る。
マッテオはムートのツノに縛り付ける。
みんなの周りに障壁を張り重力魔法で固定する。
「ムート、思いっきり飛んでもいいぞ。」
ムートは嬉しそうにのびのびと翼を広げると飛び上がる。
充分に高度を取ると一気に加速する。
ドーンとソニックブームが起こる。
これ低空でやると街や森が吹き飛んじゃうからね。
上空は青というより藍色に近い。
見下ろすと白い雲が流れている。
ムートの後ろに白い飛行機雲が出来る。
翼はあるけどなんか前世とは違うシステムで飛んでいるんだと思う。
物理とか科学とかじゃない感じ。
国際線の飛行機の窓から外を見たのと同じような景色が広がっている。
マップを見るとどんどんホビエの港街に近づいて行く。
もう少しなのにマッテオが目を覚まして騒ぐ。
でも大丈夫、ムートに少し背面飛行をさせるとすぐに大人しくなった。
港街近くの街道に降りる。
人化したムートが抱きついて来て
「思いっきり飛べたよ、翼が久しぶりにのびのびした感じ、楽しかったよ。」と言う。
「ムート良かったのう。」と言って頭を撫でる。
「ユウト、ムートにあまあま。」
レティシアが呆れている。
「マッテオ、全然怖くなかったじゃろう。」
そう言いながらヒールでマッテオのおでこに出来たたんこぶを治す。
「そういう問題じゃない。」とマッテオが怒る。
「ユウトのデコピンなんかされてたらその内おれは死んでしまう。」
「大丈夫だよちゃんと加減しているから。」
「本当か?」
「だいたいこのぐらいの加減かな。」
と言って街道の木にちょこんとデコピンをして見る。
ドコーンと音を立てて木に穴が開いた。
「あれっ、ちょっと強いかな?」
マッテオが真っ青になった。
「大丈夫だよ、死んでも治るから。」
「いや、だからそういう問題じゃないから。」
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