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第38話 魔王1
しおりを挟むやっぱり温泉は露天風呂じゃ。
レティシアとムートは今は自分のシャンプーなどをしているからようやくひとりで静かな温泉を楽しんでおる。
極楽じゃ。
突然ザブーンと水柱が立つ。
津波のように荒れる波が収まるときれいなお姉さんがいた。
瞳は赤く髪は白、角が頭の両側に付いている。
フワッとした柔らかな表情をしている。
「殿、殿なの。」
わしの両肩をつかまえてくんくん匂いを嗅いでいる。
魔人族はわんこ系なのか。
ウロちゃんがお姉さんにひざまづいて言う。
「間違いなくお館様でございます。魔王様。」
「おお、お前が殿を見つけて連れてきてくれたのじゃな。でかした、誉めてしんぜよう。」
「魔王?」
「殿、私を忘れてしまったのか?あーんなことやこーんなこととかした仲なのに。」
わしゃこんなに小さいのにあーんなこともこーんなこともできんわ。
中味はじじいじゃが肉体に引っぱられるのかエロいことにはまだ反応出来んようじゃ。
もったいないがの。
裸のお姉ちゃんが目の前で堂々としている事など生前はなかった事じゃ。
魔王はわしの肩を持って揺さぶる。
わしは足が浮いてしまってぶらんぶらんしている。
「魔王様、お館様はなーんにも知らないみたいですよ。僕のことも知らなかったし。世の中の事も全然知らないちっちゃい子供です。」
ウロちゃんは魔王の配下だったの。
「ユウトごめんね、ダンジョンで会ってからずっとユウトのこと調べていたんだ。」
レティシアが魔王からわしをひったくって言う。
なんか怒っとる。
「乱暴にあつかわないで、ユウトが目を回しているでしょう。」
お前もな。
「そちはだれじゃ?」
「レティシアよ、ユウトの保護者。ユウトはまだこんなにちっちゃい子供なんだから。」
「ご主人様前はこんなちっちゃくなかった。もう少し大きかった。久しぶりに見つけたら縮んでた。でも匂いは間違いなくご主人様」
とムートが言う。
「確かに勇者にしちゃちっちゃいの。」
こらこらよってたかってちっちゃいを連呼するな。
魔人族や竜は魔力の固有の匂いで判別するのか。
彼らは姿を変えることができるから見た目があてにならないからじゃな。
しかし1000年前の勇者がやらかした事などわしと関係ないんじゃ。
なんだか魔王は久しぶりに勇者にあったことで目をうるうるさせているがその感情にはお応え出来ないので申し訳ない事じゃ。
「1000年待ったんだからもう10年ぐらい大きくなるのを待ってもいいか。」
と勝手に納得することにしたようじゃの。
レティシアはそんな魔王の様子を見てかわいそうになったのかわしを抱えて魔王に渡した。
撫でてもいいよというつもりか。
やっぱり飼い猫扱いじゃ。
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