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第29話 スタンピード2
しおりを挟む「レティシアは知っとったんか?」
「お兄ちゃんは仕事のことは話さないわ。私も騎士団を辞めてしまったし。」
「そんなもんか。ワシも行ってみるか。」
ここからは馬車に乗って三日ほどの距離らしい。
わしはゲームの時に行ったことがあるから転移魔法でいけるが、それをするとムートが拗ねるだろうな。
「じゃ、ムート乗せてくれるか。」
そういうとムートはピンっと尻尾と頭の角を立てて(回転式か?)レティシアの膝からわしを取り上げてぎゅーっと抱きしめる。
「もちろんだよーご主人様ー。また、いろんな所に一緒に遊びに行こうよー。」
わしを両手で持ってぐるぐる振り回し始める。
「こらーっ目が回る。はなせー。」
と言うと本当に手をはなしよった。
「あっ。」
とムートが言うのはわかった。
わしは十分に遠心力で加速された状態でギルドの壁を突き破って表の通りまで飛んだ。
くるくると回って足から石畳の上に着地した。
言っておくが、わしは猫ではない。
通行中の皆さんがジロジロと見てくるのでそそくさとギルドに戻った。
「ご主人様ごめんね。あんまり嬉しくて。」
と角を垂れている。
角がわんこの耳のようじゃな。
尻尾も股の間に挟んでるし。
「そう、行ってくれるのね。じゃ、その前に壁の修繕費に金貨10枚。」
とメルダが普通に言う。
まあ、ペットのやったことだからわしが払わんわけにはいかんか。
レティシアがジーッとわしを見てくる。
「お嬢様、一緒に行きましょう。」
と言わないわけにはいかないんじゃろう。
上空は寒いので、体のまわりに風魔法を使って温かい空気で層を作りムートの頭の上に乗る。
大きなツノとは別に小さな角がつかみどころとしてちょうどいい具合で生えている。
重力魔法を併用してレティシアが落ちないようにしている。
ダリオスに向かって街道の上を飛んでいく。
「ムート、急がなくていいからな。ダリオスの街が見えたら地上に降りるんだぞー。」
こんなでかいやつが街に来たらスタンピードよりも脅威じゃわ。
黄土色の土とゴロゴロとした岩の荒野が地平線まで続いている。
ほんとに何にもないなあ。
あんなとこずーっと馬車に揺られるのは苦痛だろうな。
ゲームではサンドワームやデザートサーベントやらスコーピオンなどがちょこちょこ出てきて、ここでしか手に入らない鉱物系のアイテムが手に入ったものじゃったが。
レティシアが珍しそうにムートの背中を歩いている。落ちはしないがあんまりウロチョロしない方がいいんじゃがな。
「ユウトこの1枚だけ反対向いてる綺麗な鱗って逆鱗ってやつよね。」
と言いながらレティシアは逆鱗に触ろうとする。
「あ、だめ。それ触っちゃ。」
と言う制止は間にあわなかったようじゃ。
「あきゃーっ。」
とムートが声を上げて暴走した。
速度がぐんぐん上がる。
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