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第13話 エリクサー2
しおりを挟むぐったりとして自室のベッドに転がっているとレティシアが来た。
「寝てるの?」
と声をかけてくる。
面倒くさいので寝たふりをしてると隣に寝てわしの頭を撫でる。
「わしゃ猫か。」
と言って起き上がると悪びれもせず。
「おきてたの。」
と言う。
「父上と兄上には会ったけどレティシアの母上には会っていないね。」
と言うと
「お母様は病気なの。」
と言う。
「お医者さんにも直せないみたい。エリクサーでもないと・・・。」
「でもエリクサーなんて伝説のアイテム手に入るわけないわ。」
「ん、あるよ。ほら、これ。」
と言ってエリクサーをインベントリから出す。
インベントリの残数は9999から変わらないから表示出来ないだけでもっとたくさんあるんだろうな。
「はーっ、そんなことあるわけないでしょ。こういうことでふざけないで頂戴。」
エリクサーを作るには世界樹の葉だとか古龍の血だとか普通だと手に入れられない材料があるし、あっても大賢者でないと作れないとか思っているんだろうな。
エルフの里に行くとお土産物屋で普通に売っているんじゃがな。
まあエルフの里が今でもあるかどうかは知らんが。
「信じなくてもいいけどお母様に飲んでもらったらいいんじゃないかな。治ったら儲けもんぐらいで。」
「お父様に相談するわ。」
と言ってエリクサーを持ち、もう一方の手でわしの手をつかんで執務室に連れて行く。
カールはレティシアの持って来たエリクサーの小瓶をジーッと見る。
「これは間違いなくエリクサーだね。」
「お父様そう言うのなら間違いないわ。どうしてユウトがこれを持っているの。」
それは答えられん。
転生者なんてあやしすぎるじゃろ。
「覚えてない。」
と言うか本当のことは言えんのじゃ。
「お父様は鑑定のスキルを持っているの。」
「わたしの鑑定スキルはアイテム限定だけどね。」
とカールは言う。
まあそうじゃないとわしのステータスの異常さがわかってしまうからな。
最近ようやく漏れている魔力の抑え込みやステータスの隠蔽が出来るようになったので大丈夫だとは思う。
「それではさっそくお母様に飲んでいただくのじゃ。」
とわしは言う。
「いや、だが、こんな貴重なものを貰っていいのだろうか。君に何で報いればいいのか考えつかない。」
「そんなの治ってからでいいでしょ。」
エマの寝室に入る。病いでやつれてはいるけどレティシアに似た美人だ。
「あら、みんな揃ってどうしたのかしら。」
わしの鑑定スキルではこれは癌じゃ。
既にステージ4に達している。
呪いの類いでもないしこれならたぶんわしのヒールでも直せそうじゃが。
レティシアがエリクサーの小瓶をエマにわたして
「お母様これを飲んで。」
と言う。
エマは察したようにうなづくと小瓶のフタを開けてコクコクと飲む。
さすが魔法の世界じゃ。
エマの体がほんのり光り顔色が良くなって行く。
「なんだか体が楽になって来たわ。」
と言う。
レティシアもカールもフィリップも
涙をぼたぼたと落としている。
その日のうちにエマは起き上がることができるようになり、家族揃って中庭でお茶を飲んでいる。
「ユウト君、本当にありがとう。どんな御礼をしたら良いのか、君に何か希望はないのかな?」
とカールは言う。
「身寄りもなく出自もわからない、わしのような者を屋敷に招いて世話をしてもらった。」
「このような優しさにはむしろ御礼をするのはわしの方じゃろう。」
「エリクサーでは足りないぐらいの気遣いをいただいているとわしは思う。少しでもお役に立てて嬉しいのじゃが。」
「なんていい子なの。」
とエマはわしを抱きしめる。
レティシアよりボリューミーなものが顔に押しつけられて息ができん。
この家族はみんな揃ってこんな感じか。
お母様、そろそろはなしてあげないとユウトがぐったりしていますよ。
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