そのAIゴーレムっ娘は猫とプリンの夢をみる

第66話 勇者ユウト

「やあコージ、珍しいのう。こっちに来るのは久しぶりじゃないか？」

勇者ユウトは相変わらずカルナガリア王国　王都に程近いフエツの街にあるロイス邸に居候している。

中庭の東屋でレティシア達とくつろいでいる。

この人は動き回ると事件になってしまうので大人しくしていてもらった方が王国としても都合が良いのだろう。

マヨネがチャオに手をひかれながらポーっとユウトを見ている。

多分ユウトの濃厚な魔力とシンクロしているのだろう。

マヨネの大部分がユウトの魔力で作られているのだから。

「ん、だいぶ賢くなったようじゃの。」

ユウトがマヨネの頭を撫でているがちっちゃい子に頭を撫でられるちっちゃいお姉ちゃんって感じで少し変。

マヨネの方が少しユウトより大きかったんだね。

コージは辺境の魔獣国の遺跡で気になっていたことをユウトに話す。

ローセブミリーマってコンビニが埋もれていたって事そして遺物として出てくるものが僕が前世で生きていた時の物といっしょだと言う事。

それって僕が転生して間もなくあの世界が滅びて地中に埋もれたって事？

この星は地球だったの？

「なんだコージそんな事気にしていたのか？それよりすごいものが発掘されてたんだぞ。これなーんだ。」

「うわー。それは子供が見ちゃいけないHな雑誌じゃないですか。ちょっとマヨネはチャオのところに行ってね。」

マヨネはこくんとうなずいて走っていく。

「どうだこんな状態で残っているなんてすごいじゃろう。」

ユウトが自慢気に見せてくれる。

きれいでナイスなおっぱいのお姉ちゃんだ。

「印刷が少ししか褪色していないって奇跡的です。中の方はもっと鮮明に色が残っているかも。」

「しかし紙が硬くなっていてページがめくれんのじゃ。」

「少し湿らすのは？」

「ダメじゃ、溶けてしまうのじゃ。ちょっとやってみたのじゃ。」

「めくるというよりもはがす感じで。」

「あんた達何してんのよ。」

ギックー。

二人は硬直した。

エリミリアがなんでここに。

「なにそれ。」

と超古代遺物にエリミリアがさわった途端にそれは陽の光にあたった吸血鬼の様に一瞬でサラサラと砂のようになってしまった。

「あーっ、雑誌がー。」

コージとユウトが声をそろえて叫ぶ。

「これヒールかけたら直りませんか。」

「多分エリクサーをかけても直らんじゃろう。」

二人はがっくりと肩を落とす。

そこになぜかペトロニウスがやって来て言う。

「そんなもの遺跡から発掘しなくてもアカシックレコードにあるんだからアクセスして実体化すればいいじゃないか？」

「ペトロニウスはロマンがないのー。見れるかどうかわからないものを工夫して見る、その工夫にロマンがあるんじゃ。」

「じゃ、これいらない？」

「いる。」

ユウトとコージの声はシンクロした。

エリミリアが呆れている。

「男の子ってバカね。周りにたくさんの女の子がいるのに。」

何故か東屋にケルビム達が降臨している。

王都でライブがあるので勇者のいるロイス邸に来たとか言っているけど本当の狙いはユウトが作ったプリンだと思う。

セラフィムとルシフェルがパクパク食べている。

この天使達どこでも実体化出来るから距離の概念がない。

本当は何も食べなくても平気だけど味覚の楽しみを覚えちゃったんだね。

なんだかユウトが自由すぎて何しに来たのかどうでもよくなってしまった。

チャオがマヨネと一緒にケルビム達とプリンを食べている。

この異世界に転生して来て思うのはよくある魔王とか邪神を倒すとかの使命みたいなものがない。

「そりゃそうじゃ、そういうことが終わった後の世界じゃからのう。」

ユウトはさらりと言う。