そのAIゴーレムっ娘は猫とプリンの夢をみる

yahimoti

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第62話 エルバート・サイツインガー

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大荒野から帰って来て2ヶ月程は猫舌屋で魔道具を作って過ごした。

マヨネもすっかり錬金術師らしくなって来ていろいろな魔道具作りを任せられるようになった。

マリタお嬢様も浮動機のカスタマイズなどを手伝っている。

ヘルミーネお嬢様はトラやハチと一緒に店頭に出ているのが性に合っているようだ。

チャオはコージの仕事を眺めていたり、外に散歩に出たり。あるいは猫化して棚の上で寝ていたりととっても猫らしい。自由だ。

何も変わらないような日々とは言っても、お屋敷の方のダイニングやリビングには普通にいろんな人がやって来るし、滞在していく人もいる。

今朝もダイニングにはアレイン王様とヒナ、アイゼイヤとエイベルが来ていた。

「たまには文化的な食事をした方がいいよね。」

とか勝手な事を言っている。

「ぶんかてきってなーに。」

アイゼイヤは相変わらずのようだ。

・・・・

「皆さーんお疲れ様でーす。こちらが帝国指定観光遺産、地上の月エルバート・サイツィンガーでございます。」

ウサギ耳のガイドさんが説明してくれる。

ユウトがいいところだったって言っていたのでお嬢様方とマヨネとチャオとで来て見た。

「伝承では1362年に一度ルネリリーかカテリリーのどちらかが皆既月食になります。」

「この月が湖の中央に映り込んだ時に月の女神ジュノツマルヤが現れると言われています。」

あれ?ジュノツマルヤさんこの間うちのダイニングでご飯を食べていたけどな?

「すごいね。ここ、湖が一望できるんだ。」

「ここ温水プールだから水着を着ないとダメだよ。」

みんなはここの貸し出しの水着を着ているのでとりあえず安心。

と思ったらいきなりの全裸。

アラクネのエイベルとグリフォンのアイゼイヤはさすが魔獣だけあって裸でも全然平気みたいだ。

神々しいぐらい普通にしている。

こっちの方が恥ずかしい。

二人は大理石を掘り上げたように美しい。

「ねえエイベルみずぎって何?」

「みずぎ?知らないわ。」

説明するよりも着せた方が早いとばかりにマリタお嬢様が施設で貸し出している水着を着させる。

「ぷーるって何?お風呂と違うの?」

「ところでいまさらだけど何でエイベルとアイゼイヤがここにいるの?」

マリタお嬢様が尋ねる。

「ここってアレイン魔獣国のすぐそばなんだよ。最近、帝国旅行社が観光地として認定をもらったらしいよ。私達はコージの匂いがしたから来たんだけどね。」

エイベルが言う。

「それ、コージの匂いじゃなくてプリンの匂いじゃないのかな?」

エイベルが頬を赤くしている。

図星なのね。

「月食は先日あったばかりなので今夜は特別プログラムの魔導投影(プロジェクションマッピング)で再現します。」

あぁ、再現ね。

この世界には月が2つある。

もとはひとつでたくさん人が住んでいたらしい。

2つに別れてからそれぞれの月が大気を維持出来なくなって人々は月の地中に住んでいると言う話しだ。

(ルネリリーとカタリリー、ちなみにこの地球の様な星はサイティカと呼ぶそうだ。)

湖面と空に浮かぶ四つの満月の金色に光る方の月が徐々にサイティカの影に入りやや赤っぽい光りを放ちながら欠けてゆく。

空いっぱいの星も月の光りのせいでかすんで見える。

月の明かりが翳り始めると星の光が力を持ち始める。

翳った月から湖面の月に向かって細い筋の様な光が降りてくる。

湖面の月が光り始める。

星の光もカテリリーの光りもその光の中に埋もれて行く。

すると湖から少し離れたところ、石のゴロゴロしていたところに巫女さんの衣装を着けたひとが5人程現れて鈴を掲げている。

シャーン、シャーンと鈴の音が鳴り響く。

厳かな祝詞の声が上がる。

やがて湖上の光は収まりゴロゴロとした石の間からルネリリーに返すように光が上がり人の姿が現れる。

「あれはジュノツマルヤに似ているけれど姉のアラステアカトネだね。」

チャオが言う。

知り合い?

アラステアカトネの豊穣の祝福が終わると岩でできたステージがたくさんの魔光機(スポットライト)で照らされる。

どっかで聞いたことのある曲のイントロが始まる。

自分達が発する光が魔光機より強いんじゃないかっていうぐらいの輝きがステージの上に現れる。

ケルビム達じゃん。
何してんの?

踊っているケルビム達の中央にセラフィムとルシフェルが降臨する。

いやいや訳わかんない。

お客さん達はめっちゃ盛り上がっている。

この世界の神様的にはどうなんだろう?

1時間程のステージが終わると眩いばかりのケルビム達の光が収束していきやがて消えてしまう。

月食の終わった月が煌々と輝き、星々が満天の夜空を埋めるように煌めいている。

何万年もの過去から時を経てこの星にようやくたどり着いた星々の光が
ささやかな人々の生を際立たせる。
儚いからこそ慈しむようにと。

セラフィムの細い優しい歌声が微かに風に紛れて聞こえる。

帝国観光局の要望でアイドルユニットをやっているそうだ。

プリンの差し入れをしたら握手券をくれた。
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