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第43話 陞爵と…

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マリタお嬢様もヘルミーネお嬢様もサデセブのショールームから帰るとそのままお父様と一緒にそれぞれのお屋敷に帰ってしまった。

トラとハチがペラペラとおしゃべりをしながら店番をするようになったものの何かが欠けたように静かだ。

コージは工房にこもっている。

マヨネはコージの横に座ってお手伝いをしている。

だいたいコージが作って見せたものはマヨネも作れるようになって来た。

チャオは今度は錬金術師のローブのかわいいのをマヨネに着せようと考えている。

マリタお嬢様とヘルミーネお嬢様が猫舌屋からいなくなってひと月ほどたった。

エイドガー宰相から帝城に来るようにと連絡が来た。

特別な事は何もしてないけど何かな?

貴族が公式の場に行く時はそれなりの体裁がいると言う事だし、ペタペタと徒歩で来ちゃダメって事らしいのでハンネス子爵の馬車を参考に自家用浮動機を作る。

途中から調子に乗っていろいろつけちゃったけどいいかな。

「コージ、この浮動機に猫耳としっぽっておかしくない?」

チャオが言う。

「えっ。かわいいでしょ。」

絶対コージのセンス変ってチャオは思っているけどもう治らないからどうしょうもない。

でっかい猫のゴーレムを作って浮動機を牽かせたらかっこいいんじゃないかなとか言っていたのでそれはやめさせた。

だってでっかい猫って絶対浮動機なんか牽かないし、迷惑なだけだから。

それも3頭牽きなんて最悪よ。

とりあえず走ったとして3頭が同じ速度で同じ方向に動くとは思えないし、ネズミや虫が出たら、あるいは子供がボールでも転がしたらと思うとぞっとする。

トラとハチを見ていてなんとも思わないのかな?

ちゃんと仕事はしているけど何か動いているものを見ると落ち着かなくなってうずうずしているし、急にパッと飛びついたりする。

耳としっぽがついているだけであんな状態なんだから。

そう言っているチャオも猫なんだけど。

服はコージは前に用意したローブがあるからいいとして、やっぱりマヨネにかわいい錬金術師のローブを作ってもらいましょう。

ついでに私の服も、楽しそうなチャオである。

エイドガー宰相からは帝城に来いって言うだけで要件は何もわからない。

コージ達が帝城のホールに入ると既にかなりの貴族達が集まっている。

子爵とはいえ新参の貴族のコージには特に挨拶などをする相手もいない。

貴族って言うのは格下の者が格上の貴族に話しかけるのは失礼になるらしい。

コージにはそんな序列なんか分からないし、知り合いも殆どいない。

すると白いドレスで着飾ったマリタお嬢様とヘルミーネお嬢様が双方のお父様に手を引かれてホールに入って来る。

豪奢なモーニングの様な白い服を着たイケメンの貴族が何人かいるので婚約の発表があるのかもしれない。

貴族のお嬢様には家と家を繋ぎ自分の家を護ると言う役割がある。

愛だの恋だのは婚約前までのお遊びで夢物語なのだ。

お嬢様方にもそう言う時期が来たのだな。

コージは少し寂しい気持ちにはなったが仕方のない事と割り切る。

「ストレイフ卿、領地では凄い人気者になっているそうじゃないか。」

エイドガー宰相が話しかけてくる。

この人はすごく気やすいし、以外としきたりの様な物事は重視しない。

必要なら利用すると言う考えのようだ。

そして目的に合わなければやめさせると言う感じ。

「学校や病院を作り、いろいろな産業を起こしているだろう。運用のシステムが面白いので帝国の他の学校でも採用する事にしたんだ。」

「あれならかつてガリ勉と言われた私でもいじめられる事は無かっただろうな。」

「君のおかげで税収も上がり帝国への貢献度はなかなかのもんだよ。あの呪われたと言われた土地が凄い変わりようだ。」

「別に必要だったからしただけだし、実質地元のギルドや商人達がした事だし。」

コージは言う。

エイドガーはふふんと鼻で笑って言う。

「謙虚も度がすぎると嫌味だぞ。」

「コージは帝国の広告塔として伯爵に陞爵する。」

「心配するな別に今まで通りで充分役に立ってもらっている。黙って受けてくれ。」

そう言うとコージの周りに従者達が集まりホール中央にある壇上にあげられる。

エイドガー宰相がホールのみんなに向かって話す。

この間作った拡声の魔道具が役に立っている。

「ストレイフ卿の功績は敢えて言うまでもないだろう。コスタドガル帝国 ルチアナ皇女の代行としてここにストレイフ卿を伯爵に陞爵する。」

その後各大臣や大貴族の祝辞があったけどもう何を言われているのか全然頭に入ってこなかった。

ようやく式典も終わりだと思って壇から降りようとしたところをデルバート主任が引き止める。

「おい、コージの式典はこれからが本番だぞ。」

「えーっ、もうクタクタなんだけど。」

エイドガー宰相が再び壇上に上がってくる。

「大賢者ユウトが言っていたが、こう言うのをサプライズっていうらしい。」

「ストレイフ卿の婚約発表をこの場を借りて行う。しかも一度に婚約者が二人。爆発しろー。」

満面の笑みでマリタお嬢様とヘルミーネお嬢様がかけよってくる。

マヨネとチャオも花束を持ってかけてくる。

何事?

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