そのAIゴーレムっ娘は猫とプリンの夢をみる

yahimoti

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第33話 レイアンの末路

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マヨネがドーンって足踏みするとピョーンとサンドワームが飛び出してくる。

それも3匹位いっぺんに。

それをぽこぽこと棒で叩いてのして片っ端からインベントリに入れて行く。

サンドワームって小さい奴でも胴回りが直径5mほどあるからなかなか迫力がある。

たまたま近くにいるステップリザードがコローンってひっくり返るし、ワイバーンが落ちて来たりする。

面白がって何回か繰り返すともう何にも出て来なくなる。

場所を変えればまた出てくるだろうけどいっぺんにそんなにたくさんはいらないしね。

週一で大荒野には材料やお肉を取りに来る。

鉱山ではないし少量ずつだけど希少な鉱物も落ちているから錬金をするなら大荒野はお得だよ。

ただしマヨネが居ればだけど。

「お肉たくさん取れたー。」




な、なんだ?地震か?

ドーンドーンと何度も地面が揺れる。

その度にサンドワームが飛び出しているがサンドワームにそんな習性があったのか。

なんとかダリオスの鉱山に着く前に逃げ出すことができた。

こんな事で終わってたまるもんか。

逃げて来た割にレイアンはこぎれいだし、装備もまあまあだ。

ああいう拘束具っていうのは付けられた者の魔力を使って作動する。

対象が死んで魔力がなくなって仕舞えば外れる。

死んだふりはレイアンの特技のひとつだ。

実際に呼吸も心臓も止めて一時的に仮死状態になることができる。

しかもその間意識を保つことができる。

やっかいな奴なのだ。

ダリオスまでの移動の間に死んだふりをして隊列から離れた。

普通は死んでしまえば魔獣の餌なのであまり死体に関心を持つことはない。

レイアンの場合は頭についた魔力を封じるリングを回収しようとした衛兵がレイアンの騙し討ちにあったのだろう。

今レイアンが身に着けているのはその衛兵のものだろう。

レイアンは元々Cランクの冒険者だからそこそこ強いからね。

街道の結界石を一つ盗んで体に括り付けているからこのところはちゃんと眠れる。

むしろ大荒野であることが幸いしてレイアンの生死の確認など誰もしない。

この機会にレイアンは死んだ事にして別人になってしまえばいいのだと考えた。

で、成り替わるためのカモを探している所だ。

なんだか物凄くいい匂いがする。

大荒野の真っ只中で焼肉ってバカじゃねえのか?

思いっきり魔獣が集まって来るだろうが。

しかし、うまそうだタレの焦げる香ばしい匂いが食欲をそそるー。

レイアンはふらふらと匂いの方向に惹きつけられていく。

「やっぱりサンドワームは付け焼がいいね。脂身が甘くてトロトロ。美味しいねー。」

「マヨネ、タレでお洋服が汚れちゃうよ。」

チャオが大きな布でマヨネに前掛けをする。

「このお肉は私のよ、私が育てているんだから。」

と言ってマリタお嬢様が網の上のお肉をお箸でおさえている。

「俺にも食わせろー。」

と男が飛び出して来る。

マリタお嬢様を掴んで人質にしようとしたのだがチャオにつかもうとした手を弾かれる。

男はそれには気が付かずちょっと失敗したぐらいにしか思っていない。

「あれ、レイアン何してるの?」

コージが言う。

「なんだ、お前、このヤロ、コージじゃねえか。」

「ここで会ったが、えーっと何年目だったっけ。」

「いや、そんな事はどーでもいいんだ。」

「お前のせいでオレは、オレがオレー。クソー、殺してやるー。」

「レイアン壊れてる?」

レイアンは剣を抜く。

「うるせー。お前を殺さないとオレの気が収まらないんだよ。死ねー。」

「あぶないよー。」

マヨネが剣に手をかける。

「マヨネ、ダメー。チャオ、マヨネと一緒に少し離れて。」

ちょっと試してみたい事があるんだ。

コージは魔法陣を描く。

「聖剣を実体化。」

「聖剣とのリンクを構築。」

「筋力強化。」

「剣聖スキルをインストール。」

コージが剣を構える。

「バカじゃねえのか。コージのくせに。オレに勝てると思っているのか。」

レイアンはそう言って無造作に斬りつけてくる。

コージはその剣を払う。

レイアンの剣は根元近くからスッパリと切れてしまう。

コージはそのままレイアンの胸元を蹴り飛ばす。

レイアンは吹き飛んだがくるりと回転して着地する。

「クソー、こんなもん抱えてるからコージなんかにやられるんだ。」

と言って腹に巻いていたでっかい結界石の入った袋を外して投げつけて来る。

「あ。」

「あ。」

「あ。」

「あ。」

4人が声を合わせた。

レイアンの足元からサンドワームが飛び出した。

レイアンはサンドワームの口の中に消えていった。

サンドワームはいつもは獲物を丸呑みしてじっくりと消化する。

なぜか今回に限ってバキバキと噛み砕く音がする。

「マヨネ、サンドワームを...。」

と言うがマヨネはチャオに掴まったままイヤイヤと首を振る。

「あぁ。レイアンを殺してしまった。」

そう言うコージにマリタお嬢様は

「違うわ、あの男が結界石を捨てて自滅したのよ。」

と言う。

コージの手から聖剣が消える。

これでぽこんと叩いたら聖剣の力で「キレイな方のレイアン。」

になる予定だったんだけどな。

それも気持ち悪いかな?

「どーしてコージが聖剣を持っているの?どーして聖剣が使えるの?コージは勇者なの?」

マリタお嬢様が混乱している。

「マヨネのインベントリに入ってたんだ。」

マヨネとコージのインベントリはつながっているのでどちらでも出し入れ出来る。

「ユウトが使い方を教えてくれたし。」

「それ、エリミリア大聖女様にばれたらめっちゃ怒られそうだけど、勇者様が。」

ユウトやペトロはめちゃくちゃだと思うけど僕が生きているのは何十年かって所。

その僕に聖剣を持たせた所で悠久の時を生きる彼らからすれば刹那の事。

些細な出来事。
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