29 / 71
第29話 トラとハチ
しおりを挟むコージがゆっくりとページを開いてジーっと読んでいる隣でマヨネはテーブルに置かれた本のページをペラペラと超高速でめくっているだけに見える。
この時マヨネの目は本のページを高速撮影し画像からテキストに変換、プロセッサで解析。
内容をプログラム化してストレージに保管していく。
読んでいるのは錬金術の技術書なのでマヨネはとんでもない勢いで錬金術を学習していることになる。
コージが爵位を授与された時の特権で帝国図書館と王国図書館の全ての書籍の閲覧権がもらえたので午前中はみんなで図書館に来る事にした。
チャオとマリタお嬢様も並んで本を読んでいる。
二人が読んでいるのは漫画のようだ。
帝国図書館は魔法学校と併設されており帝宮に近接している。
猫舌屋のあるガラクタ通りから中央大通りにでて歩いても30分ぐらいなので散歩にもいい距離感。
お店は今はゴーレムが店番している。
マヨネの設計図を元にかなりの劣化版だけど店番出来るお手伝いゴーレムを2体作った。
劣化版と言っても本体強度とプロセッサの処理能力、ストレージの大きさが違うくらい。
って言うとかなり違うかな。
戦闘能力は持たせていない。
学習機能はマヨネの様な自主的に学習するタイプではなくプログラムをインストールするタイプだ。
食事はしない。
魔石に魔力を充填するタイプ。
電池式みたいなもの。
見た目はマヨネより少し大きな猫獣人の女の子型で、髪の色が銀と白が縞模様になったトラと黒の真ん中分けのハチの2体。
メイド服を着ている。
もちろん猫耳としっぽがある。
コージの猫好きのせいだね。
今日はヘルミーネお嬢様が一緒にいてくれているから大丈夫だと思う。
ヘルミーネお嬢様は魔道具オタクなのでトラとハチに興味深々なんだ。
「今日はお店にヘルミーネお嬢様がいるからケーキのお土産を買って帰ろうね。」
とマヨネに言うと。
首をコクコクと振って
「ヘルミーネがいるからね。」
とおうむ返ししてくる。
チャオとマリタお嬢様がいろいろなケーキが並んだショーケースを覗き込んで相談している。
お客さんが来ない間トラとハチはそれぞれ手分けして品出しをしたりお店の掃除をする。
それも終わるとジーっとしている。
「あんた達といても以外と退屈ね。」
ヘルミーネお嬢様は不満そうだ。
しばらくするとお嬢様は何を思ったのか埃取りのハタキの先を外して柄と先っぽのフサフサに紐をつけて繋いだ。
ポーンっとフサフサを投げると少しずつ柄を引いてフサフサを動かす。
トラとハチはじっとしているが目はフサフサに釘付けになっている。
フサフサが少し動くとトラとハチがピクッと動く。
その様子を見てヘルミーネお嬢様の目がピカリとひかる。
ヘルミーネお嬢様がハタキの柄をきゅっと引くとフサフサがブワっと動く。
トラとハチはそれを目で追いかける。
そうしているうちにフサフサが自走掃除機に引っかかるとその拍子に自走掃除機のスイッチが入る、しかも最高速モードで。
自走掃除機がギュンっと動くとついにトラとハチが我慢出来なくなった様に飛びつく。
だが自走掃除機は二人を避ける様に店内を走り回る。
ハタキの柄とフサフサを繋いだ紐が腕に絡まったヘルミーネお嬢様は自走掃除機に引っ張り回されている。
トラとハチはもう夢中にになって自走掃除機に引っかかったフサフサを追いかけ回している。
商品の展示棚の上だろうがショーケースの中だろうがお構い無しだ。
ドンガラガッチャンですー。
コージがお店の扉を開くと商品や備品がめちゃくちゃに散らかっている。
店の中では自走掃除機に引っかかった紐にぐるぐる巻きにされたトラとハチとヘルミーネお嬢様がクタクタになって転がっていた。
「何があったのー?」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!
hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。
ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。
魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。
ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。
魔法大全 最強魔法師は無自覚
yahimoti
ファンタジー
鑑定の儀で魔法の才能がなかったので伯爵家を勘当されてしまう。
ところが停止した時間と老化しない空間に入れるのをいいことに100年単位で無自覚に努力する。
いつのまにか魔法のマスターになっているのだけど魔法以外の事には無関心。
無自覚でコミュ障の主人公をほっとけない婚約者。
見え隠れする神『ジュ』と『使徒』は敵なのか味方なのか?のほほんとしたコメディです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる