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第28話 カルナガリア王国2
しおりを挟む「あ、お久しぶりです。」
コージが比較的まともに挨拶をする。
ロイス侯爵が爵位の授与の前触れにコージのお店に来た。
「すまないね、王国の体面の為に付き合わせてしまって。」
とロイスは詫びを言う。
帝国が開発し設置した転移陣のおかげで帝国と王国は日帰りで行き来出来る。
便利になったと喜ぶ者と情緒がないとか忙しないとか言う者とで五分五分と言ったところ。
まあ、いろいろ手段があるのだから好みと目的によって使い分ければいい。
ロイスは王国での式典のスケジュールと準備金、それからユウトからのお土産を置いて行った。
ユウトからのお土産の袋にはエリミリア金貨が100枚位入っていた。
マヨネの養育費って書いてある。
なんだか離婚したお父さんみたいだな。
それからペトロニウスがまとめた錬金術と魔法の本。
マヨネの設計図と仕様書が入っていた。
コージの思惑はユウトに見透かされている様だ。
マヨネの設計図を見ると作れそうだが絶対に無理な事もわかってしまう。
マヨネのコアやボディを作るのには二人の膨大な魔力量と力で半ば強引に作られている。
作り方が分かっても作ることが出来ないのだ。
ユウトは、それなら増幅器と圧力器を作ればいいぐらいにしか思ってないのだろう。
彼らは自分たちに出来るのだから他の人にも出来ると思っているのだろう。
簡単に計算しても常人では絶対に無理。
めちゃくちゃ。
帝都城の真向かいにある物流センターの転移陣に入るとカルナガリア王国の王都の防壁の外にはすぐに着く。
かつての帝国の大侵攻の時に設置された転移陣で今は物流や観光の為の大動脈となって活用されている。
コージ達は転移陣を出ると迎えに来たロイス侯爵の用意した馬車に乗って王宮に向かった。
大勢の貴族達が列席する中でコージは緊張してカチコチになってただ早くこの時間が過ぎて行くことを願っている。
何を言われて、何をしたのか全くわからない内にあらかじめ教わった様に受け答えをした。
ひと通り式典が終わるとそのままホールに移動してパーティが始まった。
コージはただエスコートしてくれたマリタお嬢様について行った。
胸には爵位の授与と叙勲の印としてエリミリア大聖女の横顔が刻まれたメダルと丼て箸のバッジをつけていた。
なんだかエリミリア大聖女の横顔ってマヨネに似ているなどとぼんやり考えていた。
「どうしたんじゃコージ、ぼんやりして。」
ちっちゃい子供、じゃなくて勇者のユウトが話しかけて来た。
「災難じゃな、いろいろ面倒な事に巻き込まれて。」
「じゃがこの世界では貴族であることはいろいろお得じゃ。」
「まあ、いいんじゃないか?」
ユウト自身は爵位も何も全く問題にならない生き方をしているのにお気楽な物言いだ。
「ユウト、教えて。僕が死んだらマヨネはどうなるの?」
ユウトは少し首を傾げてから言う。
「親が死んだ子供と同じ、コージの事を記憶に記録してマヨネとして活動を続けて行く。」
「生き物ではないので死ぬ事はない。破壊されない限り。」
「機能が停止するとか、記憶がリセットするとかじゃないんだ。」
「コージ、マヨネが不憫だとか可哀想だとか思っているんじゃろう。」
「マヨネはそのような感情がある様にふるまう様プログラムされた人形じゃ。」
「本来の感情を持たせることは出来ていない。」
「マヨネは人形なの?」
「そうじゃ精巧に出来た人形じゃ。」
「じゃがマヨネは賢くて強い、コージよりな。」
「勘違いするなよコージお前がマヨネを守るのではない。」
「マヨネがお前を守っているのじゃ。」
マヨネがチャオに連れられてコージに近づいて来る。
「マヨネ久しぶりじゃな、大きくはならんのう。」
「少しは賢くなったみたいじゃの。」
「ユウトもちっちゃいままー。」
マヨネがコージにしがみついて言う。
「ははは。マヨネは可愛いのう。」
「ユウトおじいちゃんみたい。」
コージはマヨネを抱き上げて
「何か美味しいものはあった?」
と聞く。
ユウトは少し呆れたようだが満足そうに笑って人混みに紛れて行った。
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