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第5話 贈り物

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ドーンっと大きな音がしてダンジョンの天井に穴が開いた。

周囲の冒険者や魔物がびっくりしている。

ダンジョンって天井が抜けたりするんだ、と感心している。

普通はそんな事ないからね。

コージの目の前に現れたのはワンピースの服を着た10歳ぐらいの普通の女の子。

「コージこれ読め。」

「勇者ユウトと暗冥の王ペトロニウス・グローヴズからの贈り物?可愛いがってね?」

なんだこれ?

「コージ名前つけろ」

待て待て、こんなちっこいのにレベル100の魔法剣士ってしかもゴーレム。

これもらってどうしたらいいの?

「返品不可。あきらめて名前つけろ。」

チャオは呆れている。

「勇者もペトロも出鱈目ね。コージあきらめて名前つけてあげたら。」

「じゃあ。んーと、えーと、マヨネにする。」

「マヨネを呼称として承認。」

「コージを所有者として認識。」

「コージ,チャオをパーティメンバーとして登録。」

「周辺の魔物を排除します。」

と言ってマヨネは飛んで行ってしまった。

この天井どうしたらいいのかな?

「問題ない。ペトロが直す。」

戻ってきたマヨネは取れた頭を片手に持っている。

「大丈夫、修復機能付きすぐ直る。」

「壊れないような動き方をしたほうがいいんじゃないかな?」

「マヨネ学習機能付き今アホでもじきにかしこくなる。」

「だといいんだけど。」

ダンジョンを歩いていると魔人らしい兄ちゃんが文句を言ってくる。

「このレベルのダンジョンになんてもん連れてくるんや、ダンジョンに穴は開けるしどうしてくれる。」

ここのダンジョンマスターのようだ。

事情を説明して許してもらう。

「まあ、勇者とペトロが弁償してくれるんならええか。」

なんか面倒くさいもの貰っちゃったんじゃないかな。

ギルドに戻るとマッテオ達がいた。

「コージ、幼女攫って来たんか。衛兵に捕まるぜ。」

とからかってくる。

マヨネがトコトコとマッテオ達に近づく。

「ちょっとちょっと待て。なんか以前見たようななり行きが、、、。」

「お嬢ちゃん、テーブル壊すのはやめようね。」

「マッテオさんどうしたの。」

「いや、なんでもない。お嬢ちゃんは何者なんだ。」

コージは勇者の手紙を見せて説明する。

マッテオ達は気の毒そうに「大変だな。」とか言っている。

他人事だし。

チャオはなんだか気に入った様子でマヨネの髪を漉いたり三つ編みしたりしている。

「マヨネは何を食べるの。」

「なんでも食べる。なんでも魔力に変換できるから。」

「椅子をかじるのはやめようね。」

猫耳しっぽ亭に帰る途中でチャオはマヨネを連れて洋服屋に行く。

コージは先に猫耳しっぽ亭に帰る。

着せ替え人形じゃないと言いかけて、いや、着せ替え人形でいいんじゃないかと思い直した。

チャオは帰ってくるとマヨネを洗おうとするが、

「自浄機能付きです。」

と言ってクリーンを発動する。

チャオは残念そうだ。

いろいろかまってみたいのだろう。

文字が書いてあるとなんでも読み上げる。

誰かが何かを言うと何度も復唱する。

小さな子供が何にでも質問するのと同じだ。

そして何が気にいったのか分からないが同じ言葉を繰り返したりする。

何もせずにいるとマヨネはじっとして目をぐるぐるさせている。

学習機能を働かせて情報収集をしているのだろう。

ずっと周囲に変化がないと休眠状態になる。

「じっとしていると可愛いね。」

チャオがうなずく。

「チャオこれ何。」

3人でダンジョンを歩く。

マヨネが強いので何にもしなくてもいいぐらいだけど、初めて見たものは何でも捕まえて聞いてくる。

「それはアシッドスライムだから触っちゃダメ。溶けちゃうからね。」

既にマヨネの手は骨格を残して溶けてしまっている。

マヨネはポイっとアシッドスライムを捨てると自分の手を見ている。

少しすると手は元に戻る。

自分にクリーンをかけるとチャオの手を握る。

感情があるのかどうかはわからないけれど何かを考えているような様子は幼い子供を見ているようで可愛らしい。

勇者も大魔法師も人じゃなくなってしまったところがあるので人の心に関心が薄いのかもしれない。

物に擬似的にであっても心を持たせるのは少し残酷なような気がする。

コージはマヨネの頭をそっと撫でた。
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