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第3話 フェンリルと勇者
しおりを挟む小さな時からいつの間にか一緒にいる黒猫が警戒する様に身構えている。
小さい体で僕を守っているつもりだ。
ここはフエツの街の近くにある7つのダンジョンの一つで初心者向け。
だけど34階層にもなると僕の様な戦闘職でない者には脅威だ。
既に周りは魔物達に取り囲まれている。
一応は持っている短剣に魔法を付与して身構える。
すると巨大な白い狼が走ってくるのが見えた。
フェンリルじゃないか?
なんでこんなところに。
あれはダメだどんな事をしてもあれには敵わない。
災害級の神獣だ。
僕は完全に観念した。
近づいて来るとフェンリルの頭の上に小さな子供が乗っているのが見えた。
突然、周囲の魔物達がパンっと言う音を立てて光の粒になって消えた。
パンパンパンっと続け様に音がなって周囲が明るく光り魔物は全くいなくなった。
ドロップアイテムがそこいら中に放置されている。
フェンリルと子供はこちらを見ることもなくさらにダンジョンの奥へと行ってしまった。
僕はドロップアイテムを拾い集めながらダンジョンの出口を目指した。
ダンジョンを出るまで魔物は全く現れなかった。
訳がわからないままフエツの街に帰り着くとマッテオさんのパーティにであった。
「コージお前一人なのか?」
とマッテオさんが聞いて来たのでダンジョンの事を話した。
「そりゃリルとユウトだ、コージ運が良かったな。」
「それにしてもパーティメンバーを置き去りにするなんて。」
「それもポーターを。」
「殺すつもりか?酷え奴らだ。」
マッテオさんはお怒りです。
ギルドに着くとリーダー達がいた。
驚いた顔していたが気を取り直したのか
「コージ無事だったのか。よかった。」
などと言う。
ギルドには僕は魔物に食われて死んだと報告されていた。
やっぱり僕を殺すつもりだったんだ。
何故?僕を殺す必要がある?
「何言ってんだお前らコージを置き去りにしたんだろうが。」
と大きな声で言う。
マッテオさんはこのギルドでトップクラスの冒険者だから、そんな人に大きな声で言われると疑う人は誰もいない。
これは重大なギルドの規則違反なのだし。
パーティの3人はギルドの屈強な職員さんに有無を言わさず連れて行かれてしまった。
おそらく鉱山での強制労働に行く事になる。
この世界の鉱山での労働は刑罰になる程過酷なのだ。
「コージは何も気にしなくていいからな。」
とマッテオさんが言う。
それにしても僕はまた一人になってしまった。
おそらくユウトが倒したであろう魔物のたくさんのドロップアイテムを持っているのでユウトに会いたいとマッテオさんに言うと
「ロイス侯爵の家に居る。平民でも問題ない。」
と言う。
ロイス侯爵といえばこの地域の領主様なんだけどその邸宅に僕なんかが行っていいのだろうか?
ロイス侯爵邸の門前でどうしたものかとウロウロしていると中からメイドらしい人が出て来て
「ユウト様がお待ちです。ご案内いたします。」
と言って中に入れてくれた。
ユウトはどうして僕が来るのがわかったんだろう?
「コージは充分強いじゃろう。わしが通りかからなくても大丈夫だったはずじゃが。」
とユウトは言う。
ユウトは小さい子供なのに話し方がおじいちゃんみたいだ。
「僕には戦闘職のジョブがないので無理です。」
と言うと。
「コージは付与が使えるのじゃろう。」
「自分にバフをかけて魔物にデバフをかければ負けないし、拾った棒にファイアーでもなんでも魔法の付与をすればいい武器になる。」
「錬金術が使えるし武器の知識もあるんじゃからマシンガンでもミサイルでも作れるじゃろう。」
ユウトの話しを聞いてビクッとする。
ユウトがなんで前世の文明の武器を知っている?
転生者でもなければマシンガンやミサイルなんて知らないはず。
「ユウトは転生者なの。」
「コージもな。あのボードゲームはコージが作ったんじゃろう。」
あれも転生者でもなければ知るわけがない。
黒猫が警戒する様にコージの前で身構える。
「強いお姉ちゃんもついているじゃないか。ケットシーじゃろうお姉ちゃん。」
「なんでわかったのかしら、ずっと隠蔽していたはずなのに。」
と黒猫が言う。
「えーっチャオ喋れたの。」
コージがびっくりしてチャオと呼んだ黒猫を持ち上げる。
チャオは黒いゴスロリ風の服を着た猫耳のお姉ちゃんに人化する。
「猫じゃなかったの。えーっ。」
「ごめんね、コージ、なかなか打ち明ける機会がなくて。」
コージの顔が真っ赤になっている。
だって猫だと思ってたからチュッチュしたり、抱っこして寝たり、一緒にお風呂入ったり、その他女の子に知られたくないいろいろをしてたし。
「ケットシーとは羨ましいのう。」
慌てて「あげませんよ。」と言う。
「そんな大事なものもらえんわ。」と言われる。
「コージはわざわざお礼を言いに来たのか?」
「あの時に拾ったドロップアイテムをたくさん持っているので返そうと思って。」
「持っといたらいいよ。わしが拾わなかったんじゃからそれはコージのものじゃ。錬金の材料にも使えるじゃろう。」
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