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第35話 大収獲祭ポルヒグ3
しおりを挟む祭りは鯨型の神輿が4つの祠を巡って祠にある妖精の像にお祈りをしてラプトの細かい砂のような粒を奉納して回る事が目的だ。
島の四方にあるこの祠は特別な結界を張って島に災いが入りこむのを防いでいると言われる。
神輿が4つ目の祠を巡って集会所前に戻ってくると祭りは最高調を迎える。
集会所に作られた祭壇兼舞台の上では神輿から降りた子供達が引き続き太鼓や鉦を鳴らし、笛を吹く。
それらを伴奏にして双子が歌う。
「くたびれたー。」
そう言ってナイクがゼデの隣に座る。
太鼓は他の子供と交代して来たみたいだ。
一度神輿に乗ってしまうと祠に着くまで降りる事が出来ないから大変だ。
くるりと丸くなって横になると本当に猫みたいだ。
ついぺたりと倒れた耳に触りたくなってしまう。
そっと触ったつもりなのにナイクのしっぽがぴんってまっすぐになった。
びっくりして手を離す。
「いいよ、さわっていて。落ち着くから。」
ナイクがそう言うとしっぽがふわりとゼデの膝に乗る。
「ちょっと驚いただけ。」
ナイクが目を細めて笑う。
日が暮れて沢山のランタン(天灯)が空にあげられる。
ランタンにはいろいろな願いが書かれていてそれを天の神さまに伝えるために高く上げる。
元はひとつだった月が二つにわかれたときに離れ離れになった月の住人が連絡を取り合う為に行ったものらしい。
それでもランタンはそれぞれの大気圏を出るほどの高さに上がれるわけではない事は知っていただろう。
僅かでもお互いのつながりが欲しくてただ願いを込めて繰り返されて来たのだろう。
この星サイディカに伝わったのは月から移住した人が少なからずいた為だろう。
現在でもサイディカと月の間には転移魔法陣があると伝えられている。
集会所の周りにはたくさんの露店が出ていて美味しそうなにおいがする。
「すごく賑やかなお祭りだね。」
小さな男の子が話しかけてくる。
「この島でも美味しいうどんが食べられるんだね。」
男の子の子はどんぶりと箸を持ったままナイクとは反対側のゼデの隣に座る。
この島でも帝国の転移魔法陣とつながることで物流が劇的に変化した。
帝国にあるもので島にないものは無いぐらいだ。
「おぬしがラプザーラに行った子じゃな。」
ちっちゃいのに長老みたいに年寄りくさい話し方をする。
と言っても長生きしたエルフでもなさそうだ。
「ああ、わしはユートじゃ、おぬしの事はムートから聞いているぞ、シュルツテルツの子よ。」
「えーっと、なんでそんな事知ってんの?」
「クラリスがおぬしを拾った時に島中に自慢して回ってたから誰でも知っとるぞ。」
「でもシュルツテルツって....。」
「そんなのおぬしが入っていたカプセルに書いてあったじゃろう。」
なんだ秘密でもなんでもなかったのか。
「おぬしシュルツテルツの事は知っているのか?」
「ほとんど知らない。まだ、生まれてまもなかったから。」
「じゃがおまえのプミルは何か知っているのじゃないか?」
まるで我慢しきれないといった様子でラプテスがプミルから出て来る。
「勇者はシュルツテルツを知っているの?」
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