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第30話 成層圏の海
しおりを挟む「シュルツテルツがない?空陸と勘違いしたのは濃密にラプトの粒が漂っていたから?」
今はナビコの役割をしている妖精ラプテスが悲しそうな声を上げる。
「ラプテス、僕が大きくなるまでもう少し待って。僕が大きくなったら一緒に探しに行こう。」
「ゼデ、シュルツテルツ空陸は、王国は、王妃様は、どうなっているんだろう?」
ゼデの言葉もラプテスの慰めにはならない。
だけどゼデには殆どシュルツテルツの記憶がない。
「それから、言いにくいんだけど機体にラプトの塵がたくさんついていてプギデのコントロールが効かないの。」
ラプテスが言う。
「落ちちゃう?」
「落ちはしないけれど操縦出来ないわ。」
「じゃあー。えーっと。ずっと漂っているだけ?」
キラキラと漂うラプトの粒を追う様に空を泳ぐザウリリの群れが集まっては散る。
ワイバーンも同じようにまるで蚊柱の様に群れ乱舞している。
あれに巻き込まれるのは嫌だなー。
広い空を背景にして見ているから感じにくいけれどザウリリの一体一体は体長30mほどある。
それが何百頭も群れになっている。
ザウリリやワイバーンなどはここでラプトを呼吸して飛ぶ能力を維持しているの?
いや、でもそもそも飛ぶ能力が無ければここにくることも出来ないし。
プミタスが狩っているのは群れの中でも弱ってはぐれたザウリリなのだろう。
「ゼデ!なんか近づいてくる。」
ナイクがキャノピーの外を指差して言う。
ドラゴンだ。
しかも災害級のドラゴン。
バハムートだ。
「ゼデ、あれはまずいよー。」
今のプギデの状態だとあれでなくても全然どうしようもないんだけど。
「ごめんなさい。ごめんなさい。私がこんな所に連れてきたばっかりに。」
ラプテスが泣き始める。
「あれーっ。プミタスのプギデがなんでこんな所にあるのー。」
なんだかのんびりとした女の子の声がする。
「あー。ボクはムートだよー。君たちプミタスの子供?迷子なの?」
バハムートがボクっ娘だったとは。
「ふーん、このプギデの様子じゃ動けないね。送って行ってあげるよ。」
そう言うとムートはプギデを掴んだ。
ムートは弧を描きながら滑空して降下する。
どんどんザウリリ達のいた成層圏のラプトの海は遠ざかって行く。
それに連れてプギデを覆っていたラプトの粒が剥がれてキラキラとした光の粒になって上空へ上がって行く。
「大丈夫だよー。すぐに着くよ。」
なんだか見た目とのギャップが大きすぎ。
ムートはミムグク島近くの上空でプギデを離した。
島まで行っちゃうと大騒ぎになっちゃうし。
「ムートはどこに行くの?」
ナイクが聞くと、
「ユウトのとこ。」
そう言ってあっと言う間に飛び去って行った。
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