蒼穹のゼデ

第22話 卒業

「ゼデもナイクもあいつが着水したら出ろ。クラリス、リードしてやってくれ。」

ナイクは両親と兄2人が家のプギアゼラに乗っていてナイクのプギデが載せられないのでリットのプギアゼラに乗る事になった。

「ナイクはもう嫁入りみたいなもんだな。」

インカムでナイクの兄がからかってくる。

「う、うるさいバカ兄。」

獣人族で10歳と言えば成人扱いだから変ではないがゼデは人族なのでまだまだ子供だ。

クラーケンは口から水をジェットの様に吐いて耳の様な部分を広げて時速200kmで空中を滑空する。

体長が足を含めると40m程あるので圧巻だ。

「クラーケンの下足に捕まるなよ。」

クラーケンでもワイバーンでも狩猟方法は同じ。

ブギデが次々と高高度から急降下して銛を射出しては離脱する。

「ナイク、決めたじゃん。あの銛は皮下組織まで突き抜けたよ。」

「うん、ゼデも。」
「俺もやったぜー」
ウェルもインカムに入ってくる。

目の前をくるりと縦旋回して機体を錐揉み状態に回転させて銛を射出しているやつがいる。
銛は見事にクラーケンを貫く。

「エルテか。天才だなあいつ。」

クラーケンが力を失うの見ると各ドリアゼラ(母船)が牽引用のワイヤーのついた銛を撃ち込む。

マチスの母をはじめとした魔術師達がクラーケンを凍結させる。

クラーケンは腐りやすいからね。

「ブギデは銛を補給してそのまま洋上で待機してくれ。」

プギデに乗っているのは半数が今年プミタスグリを卒業する子供達なので何故プギデをプギアゼラに格納しないのかわからない。

「来た来たー。クラーケンに誘われてワイバーンが来たよー。」

エズーレの嬉しそうな声がインカムに響く。

「ワイバーンが3羽も来たよー。クラーケンのステーキにワイバーンの唐揚げが追加だよー。」

そういう事かと納得した子供達は嬉々としてワイバーンに向かって行く。

子供達にとっては今回の狩りはプミタスグリの卒業試験と修学旅行を合わせたものみたいなものの様だ。

母船に吊り下げられているクラーケンやワイバーンをキャノピーか見下ろす。

その下にはザウリラを甲板に乗せたセイラゼの母船が見える。

母船のラウンジでは大人達が大漁に盛り上がっている。

「ナイク疲れたのか？」

「ううん、もうすぐ卒業なんだなって。」

「そうだね、ナイクは同じ島だからいつでも会えるけれど、他の島の子たちと会えるのは狩りの時ぐらいだろうか。」

「ウェルは帝国の技術院に行くみたいだし。」

「みんながザウリア(捕鯨師)になるわけじゃないんだよね。」

「そうだね、帝国で錬金術師や魔法師になる子や冒険者になる子もいるんだね。」

「いつまでも変わらずに一緒にいる様な気になっていたから...。」

「そうだね。」

そう言うとゼデもナイクもそれ以上何を言っていいのかわからなくなって黙り込んでしまう。

もうすぐ子供ではいられなくなってしまうんだ。