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第54話 王の企み
しおりを挟む「で、このおっさんはどうするんだ?」
ウツミが倒れているアグェスタス公爵を指差す。
悪魔へルフィグラは「またねー。」とか言って異界に帰っちゃったし。
「残念だけど爵位も領地も剥奪、一族郎党みんな死刑だよ。」
反逆者は遺恨を残さないように全てを処分しなければいつか復讐しようとする者が現れるから情をかけることは自滅することと同じ。
アグェスタス公爵ももちろんそれは承知の上だろう。
失敗するとは思わなかっただろう。
兵士が倒れているアグェスタス公爵を連れ去って行く。
また何人かの貴族も連れて行かれる。
アグェスタス公爵と共謀していた者達だろう。
キフェル親王が青い顔をして震えている。
ハドゥリル執政官が親王に話しかける。
「キフェル様は今回の事は承知の上だったのですね。」
「そうだ、兄上は王の役割である領土の拡大や軍の強化には関心がない。その上に貴族に対する税を厳しくして人民を苦しめる愚昧な王だ。」
「だから弑虐して王になろうとしたのですね。」
ハドゥリル執政官はキフェル親王を幽閉する様に兵士に指示をする。
その様子を見ながら王はウツミを抱き上げて玉座に座らせひざまづく。
「勇者様のおかげを持ちまして国を蝕む輩を炙り出すことが出来ました。感謝致します。」
そう言って王はニヤリと笑う。
やられた、まんまと王に乗せられた。
王はキフェル親王やアグェスタス公爵の企みを知っていてわざわざ少ない人員だけでクグルイア伯爵領に来たのだ。
アグェスタス公爵は千載一遇のチャンスとばかり計画を実行したんだ。
公爵には、まさか王が勇者や剣聖、勇者の孫まで引き連れて帰ってくる事は想像出来なかっただろう。
「王様、オレを利用したね。」
王様が笑顔を浮かべて語り始める。
「私も剣聖トゥルムがいる事は存じていましたがまさかユリア様までおられ、また勇者ウツミ様もそこまで強くなっておられるとは思っていませんでしたし、皆さんがそろって勇者様についてくる事も予定外でした。」
「ウツミはバカだから1人に出来ないのよ。」
ユリアが言う。
おまえがいなくてもミュツスがいるけどな。
この王がやっている事は貴族を減らし、さらに既得権益に胡座をかいているものを減らして国の財政を正常化する事だ。
今まで旨い汁を吸っていた奴らからは猛反発があるに決まっている。
この様な一国の内政に勇者が関わるのはあり得ないのだけれどウツミは何も分からずに利用されてしまった。
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