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第39話 召喚陣
しおりを挟む馬車はエフェの街を取り囲む街道をぐるぐると走っている。
拐った子供の受け渡しまでの時間稼ぎをしているのだろうか?
かなりの距離を移動したと感じられる頃、かつては何かの宗派の教会であっただろう廃屋の前庭に入って行く。
馬車が止まり麻袋に入れられた子供達が担ぎ下ろされる。
子供達を拐った男達はいくばくかの金を渡されて帰らされる。
彼らはこの子供達がどの様に扱われるのかは意に介しない。
ただ金になればいいと思っているだけだ。
受け渡しが済んで人さらい達が廃屋を出て行くと彼らがこの事件の末端に過ぎず情報を得る価値がないと判断したユリアは簡単に彼らを始末する。
馬車も死体も何も残らない。
ウツミと子供達はそのまま廃屋の一室に置かれた。
自分達が住んでいた街から遠く離れたところに連れてこられたと思って子供達は絶望感にとらわれて泣いている。
ウツミはと言うとマップを開いているので現在の位置は把握している。
いつ麻袋から出ようかとタイミングを測っている。
「もう数は揃ったのか?」
「なんとか儀式をする分は集まった様だ。」
「いったい何度儀式をすればいいんだ?」
5人ぐらいだろうか?
何かで口を覆っているのかくぐもった声で話している。
そして唸る様な声や鼻を啜る様な音。
結構沢山の子供がいる様だ。
臭いし、身動き出来ないのに我慢が出来なくなってきた。
ウツミが少し力を入れると体をぐるぐる巻きにしている荒縄がぷっつりと切れた。
麻袋を脱い周りを見渡す。
周囲には30個程の子供が入った麻袋が転がっている。
部屋の扉に鍵はかかっていない。
扉を開けるとただ広いだけの部屋。
元は祭壇や神の像などが置かれていたのだろう。
床に大きな召喚陣が描かれている。
そしてその中央にはうず高く積み上げられた小さな子供達。
すでに息はない。
「あれ、なんでおまえ袋から出てんの?」
黒い修道服を着て、目の部分にだけ穴の空いたマスクを被った男が(声で男だと思った)言う。
ウツミはその質問は無視して言う。
「何、これ。何してんの。」
「神様を呼び出すんだよ。今みたいに王侯貴族や勇者の様な強い者だけが得をする世の中 を壊してみんなが平等に暮らせる世界に作り直すんだよ。」
なんか声がうわずっていて気持ちが悪い。
「それで、この子供達は?」
「神様を呼び出すにはたくさんの無垢な魂が必要なんだって。」
子供を殺して世界を良くする神を召喚だと?
ボコっと音を立てて修道服の男が吹き飛ぶ。
ウツミは何がなんだかわからない感情にとらわれてつい殴ってしまった。
「急に何をするんだよ、君も素晴らしい世界を作る礎になれるんだよ。素晴らしいでしょう?」
ウツミに殴られた修道服の男が何事にもなかった様にひょいと起き上がる
いつのまにか10人程の修道服の男達に囲まれてしまう。
男達は両手に短剣を持っている。
「ちょっとこの子はおかしいよ、こんなに小さいのに強すぎる。」
そう言いながらもウツミに近づいて行く。
「殺してしまってはいけないよ。召喚陣の中で神に捧げないと。」
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