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第21話 ワイバーン
しおりを挟む「ゴブリン討伐から帰って来たばかりなのにもうギルドに行くの?」
ミュツスは言うけど別にいやじゃないみたいだ。
「せっかく装備をそれらしいものに新調したからどのくらい強くなったか試したいんだ。新しいクエストもあるかもしれないからね。」
「クエストって?」
ミュツスにクエストって言ってもピンとこないだろうな。
この世界の人と転生者の意識の違いみたいなもんかな。
鋼の鎧に鋼の剣だから当分はこれで間に合うはず。
ドラゴンを相手にするわけじゃないし。
「ほらーもう1匹来たわよー。」
ユリアとミュツスが岩の上に座って見物している。
ドラゴンって程じゃないけどワイバーンの群れっていきなり過ぎないか?
体長5mぐらいの小型版のドラゴン?んーとプテラノドンみたいなやつ。
でかいコウモリの翼みたいなのが生えていて飛んでいるが、どう見ても翼のはばたきで飛んでいるようではない。
おそらく浮遊魔法を使って飛んでいるのだろう。
中級ダンジョンの攻略のために歩いていたのにユリアのやつ、「あの鳥、唐揚げにしたら美味しいお肉をドロップするのよ。」
なんて言って飛んでたワイバーンに石を投げつけた。
どう見たらあれが鳥に見えるんだ?
それがまたちょうど先頭を飛んでた奴に当たって落としてしまった。
石コロ1個でワイバーンを仕留めるって。
案の定一緒にして飛んでいたワイバーン達が怒り狂って襲って来た。
石を投げつけたのはオレじゃないっての。
こいつらは高い所を飛んでいて急降下して攻撃してくる。
剣を振り回していてもカウンター狙いぐらいしか出来ない。
攻撃してくる嘴をかわしながら反撃するが1匹に気をとられていると他の奴に翼で叩かれる。
何せウツミは体が小さいので簡単に吹き飛ばされる。
「あーっ、新調したばかりの鎧がー。」
岩に叩きつけられて鋼の鎧がへこんでしまった。
「なんだー、くそー、まだダンジョンにも行ってないのにー。」
やけくそになったウツミはサンダーの魔法を空に向かってぶちまけた。
バリバリと轟音を上げて10匹程いたワイバーンを稲妻が襲う。
「ウツミのバカーっ。お肉が焦げちゃうじゃないのー。」
ユリアが怒るけど、それならユリアがやっつけてくれたら良かったんだ。
ワイバーンがバタバタと落ちてドロップアイテムを残して消えて行く。
ワイバーンの嘴と爪、お肉と魔石。
「お肉が3つある。」
「でかした。」
ユリアは急に機嫌が良くなった。
「唐揚げ、唐揚げ。」
けれどウツミの気分は最悪だ。
「昨日買ったばっかりなのに。あんなにワイバーンがいたんだから手伝ってくれたらいいじゃないか。」
「何勝手な事言ってんのよ。いっつも手出しをしたら不機嫌な顔をしてるじゃないの。」
ミュツスが不満気に言う。
「別に装備さえちゃんとしていればどうってない相手だし。」
そうだろうよ。
そんなのわかってんだよ。
だけれどオレはちゃんとこの世界を楽しみたいんだよ。
とはいえ、オレ自身にチートが無くてもこいつらが一緒にいる事がチートなんじゃないの?
ミュツスは剣王で勇者の孫のユリアはバカみたいに強いし。
うう、ダメだ。何考えたらいいのかもわかんない。
今日はダンジョンには行かずに帰ろう。
「あんた達いきなりなんてもんを狩って来るのよ。」
ギルドのサメルさんに呆れられた。
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