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第10話 剣聖

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「しょうがないなー。」

そう言って御者は御者台から降りたつと周囲の10人程の盗賊の首が飛んだ。

さらに何が起こったのかわからずに呆然としていた残りの盗賊の首もポンポン飛んでいく。

剣を抜いたのかどうかもわからなかった。

「師匠、どうしてここへ?」

「迎えに来たんだよ。」

「いえ、なぜ師匠が御者をしているんですか?」

「ええっと、アルバイトかな。」

「?」

「うそうそ、勇者って子を見たくてね。」

御者は 剣聖トゥルム。
ミュツスの剣の師匠だと言う事だ。

うーむ、外人の男前だ。
長身だしスマートだし、ちょーハンサムでめっちゃ強いって反則だ。

ミュツスの目がハートになっている。

「この子が勇者様なのかい。」

声までいい。ナイスボイスだ。
世の中は不公平に満ちている。

脇に手を入れてひょいっと持ち上げられた。
抵抗する間も無かった。

ジーっと目を覗き込まれる。
何か見定められているのか?
それとも鑑定されている?

突然頬ずりされた。

「んー。めんこいねー。」

違うんかい。

「ミュツスの子か?」

ミュツスにギロリと睨まれた。

言ったのは剣聖だからね。

「じょーだんだよ。さあ伯爵邸に帰ろうか。」

剣聖トゥルムはウツミを抱きかかえたまま馬車に乗ろうとするがミュツスに取り上げられた。

「成り行きでいけると思ったんだけどな。」

そこへもう一台の馬車から女の子と従者であろうお兄さんがかけよってきた。

「あ、あの、助けていただきありがとうございます。」

この子すでに目がハートだよ。
男前はずるいよなー。

「いや、そちらは我々に巻き込まれただけでしょうから礼には及びませんよ。」

どうしてもかっこいいな、この剣聖。

「 テルファちゃん、久しぶりね。」

ミュツスが女の子に話かける。

「ミュツスお嬢様お久しぶりでございます。」

女の子は隣の領地を収めるハブセス子爵のお嬢様だそうだ。

「ミュツスお嬢様、かわいいお子様ですね。」

テルファお嬢様はそう言いながらミュツスの手からウツミを抱きかかえる。

なんだか猫かぬいぐるみのような扱いだな。

それにしても貴族のお嬢様と言うのはいい匂いがしてなんとはなしに柔らかなものなんだな。

鎧の汗臭さを取る匂い消しのお香とか鉄臭さだとか硬い筋肉だとかとは違うんだな。

などと考えているとミュツスに頬ぺたをつねられた。

だから声に出していないのになんで。

しかし、魔物とは違って斬られた盗賊達が光の粒になって消えてしまう訳も無く、周囲は血を流した遺体がごろごろ転がって凄惨な様子なのだが、あまりその事は気にしている様子ではない。

ウツミ自身もその事でショックを受けた様子もなくどうやらこの世界では珍しい事でもなく精神的なショックには耐性のようなものがあるようだ。

ある意味恐ろしい世界だとも言える。

これら盗賊の遺体の処分は街に専門の処理班があるそうだ。

この処理班は戦争の時などにも対応しているらしい。







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