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第25話 魔王核の欠片2
しおりを挟む「なんか変わった?」
「ペンダントは見た目は変わらないけど何かが抜けたって感じ。魔力を増幅する機能はそのままみたい。」
メイラが言う。
「魔王様は?」
キューがマヨルを撫でまわしている。
「やめろー。」
「うーん、2cmぐらい大きくなったのかしら?」
「あんまり変わんないね。」
スーとガーが適当な事を言っている。
見た目は変わらないけど魔力量が少し増えて制御する能力が上がったのを感じる。
もっと魔王核の欠片を吸収出来れば元の姿に戻れるかもしれない。
「まだ村にいくつかあったよ。」
と言うメイラの話しから獣人族の里に行く事にした。
ただ、獣人族の里にはまだ転移陣がないので普通の移動手段しかない。
見える範囲になら移動できる短距離転移を繰り返していく事も出来る。
でも、せっかくだからこの世界を旅するのも楽しいかも、と思って乗り合い馬車に乗った。
何も急ぐ事もないし、勇者とも離れていられる。
…はずだったんだけれど。
「なんで一緒にエリアが馬車に乗ってんの?ジャッドまで?」
「面白そうだからに決まっているじゃない。」
普通に答えるなよ。
メイラは里への案内だし、スー達はまあ、ついてくるだろうな。
「君たち学校はどうするん?」
「マヨルに言われたくないわ。」
返す言葉もない。
やがて馬車はカルナガリア王国の国境を越えて大森林と大草原の合間にさしかかる。
獣人族の里はこのまま北上した大森林の浅い所にある。
急に馬車が止まる。
馭者台側の小窓を開けて前方を見ると既に馭者はいない。
前方には横倒しになった馬車がある。
あの馬車を起こして避けないとこの街道は通れないだろう。
「降りてこい。」
と外から男の声がする。
馬車を起こしてと頼むにしてはえらそうだな。
「あー、こりゃいい稼ぎになるな。貴族の女子供がいっぱいいるじゃないか。」
こいつらにはオレ達が貴族の子に見えるのか?
こいつらは盗賊か?
確かに着ているものは小綺麗にしてはあるし、ちょっと変だけど実際にお嬢様もいるしな。
「お前達大人しくついてこい。悪いようにはしない。」
悪いに決まっているだろう。
前方の横倒しになった馬車の周りに倒れているのは雇われの冒険者の護衛だろう。
盗賊達は少しばかり腕に自信ありってところか。
どうやら拠点に案内してくれるみたいだけど、馬車をこのままにしておく訳にもいかないだろう。
マヨルは倒れている馬車に近づいてひょいと馬車を起こす。
その間にスーが倒れた冒険者を回復させる。
なんとか息があった様だ。
スーなら相手が完全に死んでしまわない限り回復させることが出来る。
ガーが馬車の壊れたところを修繕する。
「お前ら、何してんだ。」
盗賊の代表者だろうか?
抜き身の剣を持ったまま近づくのだが被害者のはずの子供達が平然としている。
「どうせ拠点に行くんだから、みんな持って行った方がいいだろ?早く案内しろよ。」
そう言うと盗賊達は微妙な返事をする。
急に立っていられなくなってひざまづいてしまう。
マヨルの威圧が効いて立場は逆転した。
魔王核の欠片を吸収して解放されたスキルのひとつだ。
相手の戦意を失わせ、動きを奪い、屈服させる。
小さな山のふもとの洞窟を使った盗賊達の拠点に着くと20人程の盗賊が出てきた。
盗賊達は数に頼んで急に元気づくがマヨルが威圧を強めるとヘタヘタと地面に手をついた。
「盗賊の処分ってどうするの?」
「法的にはその場で処刑してもいいし、衛兵に届けると報奨金が貰えることも有る。裁判をしても必ず死刑になるけどな。」
ジャッドお嬢様が答える。
盗賊達がビクッとする。
「連れて歩くのも面倒だなカルナガリアの防壁の衛兵に転移で送りつけよう。」
マヨルがグッドアイデアみたいに言う。
「ちゃんと拘束して送りつけないとかえって迷惑じゃないかな?」
ところでどうして盗賊の拠点に女子供だけでなくゴブリンがたくさん捕まっているの?
「村を襲っているのをゴブリンのせいって事に擬装するためでしょ。」
ゴブリンが人間の女性を繁殖に使うって話があるけど、ゴブリンは異種交配しない。
見てわかる様にゴブリンにも女性や子供がいる。
人族のでっち上げなんだ。
元々この辺はゴブリンの居住地だったからね。
人族の都合のいいように話しを作って魔族を貶めているんだ。
倒れていた冒険者や馬車に乗っていた商人が子供達に近づいてくる。
「ありがとうございました。それにしても勇者様の乗っている馬車を襲うとはバカな盗賊だ。」
見た目だけじゃわからないし彼らにとっては運が無かったってところ。
「ボクは何もしていないよ。」
エリアは面倒くさそうにいう。
マヨルが威圧してだけだし。
マヨルはゴブリン達を解放する。
ゴブリン達が目をうるうるしている。
「魔王様ー。よかったー、生きていてー。魔王様に会える時が来るなんてー。」
これは面倒くさいので放っておいてー。
捕まっていた婦女子を手当して馬車に乗せる。
途中の街で置いていけばいいしー。
とりあえず獣人族の里を目指そう。
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