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第21話 三日天下
しおりを挟む既に王軍は武装解除されている。
ハイデギアを擁立しようとした貴族達は勇者がエドワンクについたと見ると手の平を返す様にしてハイデギアから離れた。
ユーリハ伯爵領を包囲していた王軍も撤退した。
あっという間にハイデギアは孤立した。
最悪だったのは元々ハイデギアを擁立しようとしていた公爵もまとめて広域魔法で失われてしまっていた。
フェレスにはそんな区別はつけられないから。
ハイデギアがいるはずの謁見の間に彼の姿はない。
王冠が王座の上に置かれている。
謁見の間を通り抜け広場を見下ろすベランダに出る。
ハイデギアが広場を見下ろしていた。
振り返りもせずハイデギアは言う。
「エドワンクお前、俺を殺すのか?」
「お前がやった事を考えるとそうなると思う。」
「継承権は俺の方が上なのにか?」
「簒奪者に継承権は関係ない。ハイデギア、お前はやり方を間違えた。」
空気感が変わる。
ハイデギアの周囲を濃厚な魔力が漂い始める。
フェレスの残して行った呪がハイデギアの無念さや怒り、孤独感と融合していく。
「誰も俺のことなんか見てなかったよ。」
「俺の継承権だけが目当てだったんだ。」
「エドワンク。お前も俺と同じじゃないのか?」
ハイデギアが纏う魔力が真っ黒になっていく。
ぐるぐると周囲を回る魔力に覆われてハイデギアの姿が見えなくなって行く。
「たぶん同じ、だけどその先に求めているものは違うだろうと思う。」
ポンっとハイデギアが空間に吸い込まれるように消えた。
同時にポンっと中学生ぐらいの黒いローブを纏った少年が現れる。
「あれっ?間に合わなかったかな。」
「フェレスめ、加減を知らない奴。」
「普通に人間に持ちこたえられる呪じゃないだろうに。」
「大叔父様?」
「闇の魔法師 ペトロニウス・グローヴズだ。」
「厨二病?」
いたー。
頬をつねられた。
「魔王、お前がいて何故ハイデギアを助けなかった?」
「オレにあいつを救うことは出来ない。」
て、魔王ってばれているし。
ハイデギアが呪に喰われていく中で思い起こした記憶の断片を見た。
ハイデギアの母親は王国の有力な公爵の娘で王家との繋がりを強化するために後宮に入れられた。
貴族の娘として、その事に何の疑問もなかった。
王との間にハイデギアが生まれた時、実家は大喜びだったが継承権6位については不満そうだった。
元々の公爵家の序列や生まれた順序が継承権を決めるのだから母のせいではないのに事あるごとに嫌味を言われて母が悔しそうにしているのを何度も何度も見た。
それどころかハイデギアにまで嫌味を言う。
俺に何が出来るって言うんだ?
ずっとそうだ、誰も俺自身のことなんか見ちゃいない。
学校でも忖度しゴマをする奴しか周りにいなかった。
孤独だった。 寂しかった。
なんのために生まれてきたのか、遂に分からなかった。
「そんなこと普通だし、自分の事は自分で決めるのさ。」
魔王はハイデギアに同情することは出来なかった。
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