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第17話 魔王城
しおりを挟む1000年も経っているのに結構綺麗に保存されているもんだね。
大聖女エリミリアが隠蔽し誰も手出し出来ない様に結界で覆ったのだ。
エリミリアはその頃から何も変わっていない。
不老不死で人族の様に見えるけど本当の事は誰も知らない。
伝承も伝説でさえも風化してしまうほどの遠い過去からこの世界にいる。
建物や備品には時間の経過を止める結界が施され、無限に降り積もる塵芥はオートマター達が毎日掃き清めていた。
「エド、いい仕事したじゃん。結構エドの支持者っていたんだね。」
エリアに言われて顔を赤くしている。
こいつちょっと屈折していて女子に普通に話しかけられると喋れない。
多分オレが同じ事を言うと
「俺だって王族の1人だからな、舐めんなよ。」ぐらい言うんだろう。
「い、いや。多分母上のファンがいるんだと思う。」
意外なエドの返事。
「分け隔てのない正義漢で強い男前のお母さんね。」
シェードが言う。
いつの間に帰って来たんだ?
「フーハ ズーネヨマ魔王様。うふふ。ユーリハ侯爵とシャデリーヌお嬢様は無事領地に着いたわ。」
なぜオレの名前の後で笑う?
「勇者に逃げられたハイデギアはかなり怯えているみたい。」
まだ王都には魔族や獣人族が残っているのだろうか?
魔王が魔王城に入ると生活に必要なインフラが息を吹き返す。
魔族領は一部鉱山などを除いては魔王城の中にある。
広大な城壁と地下都市が1000年の眠りから覚めて人々が生活を始める。
「魔王様ー。これからどうするの?」
スー達がすることは変わらない。
朝、マヨルを起こして着替えさせて、ご飯を食べさせる。
しばらくするとエドワンクや勇者がマヨルと同じ食卓をやって来る。
「魔王としては人族に奪われたミスリル鉱山を取り戻すことと、王都に残った魔族達をどうするかが課題だね。」
エドワンクが言う。
シェードがどこからか現れる。
「ユーリハ伯爵領が王国軍に包囲されているわ。徐々にエドワンク陣営の貴族達や一部の魔族が援護に向かっているけれど。」
「ハイデギアをやっつけちゃえばよかったかしら?」
エリアが言う。
「それは勇者がする仕事じゃないよ。」
「でもね、マヨル1000年前の勇者はダメな王朝を滅ぼしているのよ。」
「それは本当は勇者がしたんじゃないんだよ。」
「じゃあ誰が?」
「魔法師。コミュ障の大魔法師。」
「え?」
「当時、闇の帝王とか言って遊んでいた大魔法師が勢いあまって王族を一掃しちゃったんだ。」
「だけど、自分は表舞台に出るのはイヤって言って姉のエリミリアに押しつけて引きこもったんだよ。」
「それでエリミリアはこういうことは勇者のせいにしちゃおうって。」
「だいたい勇者らしくなさそうで勇者のせいになっている出来事はその大魔法師のしわざだね。」
「はあー?で、その大魔法師は今は何してんの?」
「最近復活したみたいですよ。」
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