千年王国 魔王再臨

第15話 勇者エリア1

眼前に見渡す限りの民衆が集まっている。

「魔族を駆逐せよ。」

「魔族に与する暗殺者勇者エリアを処刑しろ。」

民衆達が現王ハイデギアの呼びかけに呼応する。

何を言っているんだ？
私が暗殺者？
あぁ、人族はまた間違った道を行くのか。

1000年前の私を騙して魔王を倒させた王家とその民達と同じに。

一時的には勇者と魔王を恐れて平和に暮らして来たのに。

あの時。

連日残業の日々で家に帰るともう日付が変わっていた。

シャワーを浴びて少し眠るとまた早朝から出勤する。

だけど当時はそんな事は普通で何にも苦痛じゃなかったんだよ。

仕事をして結果を出す。

その事が全てだったし、結構それはそれで楽しかったんだよ。

まだ20代だったし別に何も焦る事もなかった。

その日は久しぶりに課で飲み会があって大盛り上がりして飲み過ぎちゃったんだ。

で、帰りの駅のエスカレーターから仰向けに落下。

エスカレーターって鉄で出来ているだけあって硬いのね。

まあ、そのままお亡くなり。

と思ったら真っ白な空間の中に絵で見た事のある羽が生えて頭の上に輪っかのせた女神がいた。

「なんか冗談みたいにイメージのまんまなのね。」

「そりゃああんたのイメージだから仕方ないでしょ。」

って言われた。

「あんた勇者として召喚されているわよ。」

「それって、なんかいい事なの？」

「どうかしら？」

「断れるの？」

「ムリ。」

「はぁ？」

その瞬間目が覚めた様に周囲をステンドグラスの色とりどりの光に包まれた聖堂にいた。

「ようこそ勇者様。」

結局何の説明もなかったんだ。

で、人族の国々を侵略する悪の権化、魔王を討伐すれば世界は平和になるって私を召喚した王族が言うもんだからその気になって一気に魔王城に乗り込んで討伐してやった。

人族が何をもたもたしていたのか勇者の力がめちゃくちゃなのか良くわからないけど私は召喚されてから3時間程で魔王の首を刎ねてやった。

エリミリアや他のパーティメンバーが「よく考えてから動いた方がいい。」とかなんとか言っていたけど。

まずは人々を苦しめている元凶を断つのが先って思ってた。

なのに。

魔王を討伐した私を迎えたのは王族達のほくそ笑んだ顔。
そして側近達の冷笑。
パーティメンバーの呆れた様な顔。