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第14話 政変 2
しおりを挟む「やりやがったなあいつ。」
エドがつぶやいている。
母上が王宮にいなかったのは不幸中の幸いだ。
とはいえあの程度の魔法で母上がやられてしまう事もないだろう。
ここもじきに目をつけられる。
いくらエリミリア大聖女様が居るとは言っても身の程知らずのハイデギアが見逃すことはないだろう。
勇者エリアは呆然と佇んでいた。
それまで着飾った王族達が優雅に歓談していた王宮のホールには自分以外の生き残りはいなかった。
防護結界が失われる異変を感じた時には範囲攻撃魔法は発動されてしまった。
勇者の防御は間に合わなかった。
1人生き残った勇者は魔族に加担した疑いで拘束された。
ハイデギアの罠に嵌ってしまったようだ。
1000年前当時の王家に騙されて魔王を倒した勇者はその事を知ると王家を消し去った。
その後他国への侵略などの軍事行動を起こした国はことごとく滅ぼした。
各国はその勇者の力を恐れて戦争をやめた。
また人族以外の魔族や獣人族を狩ることをやめた。
ダンジョンを除いては。
だからハイデギアは勇者エリアがどう動くのかを恐れていた。
だが、勇者は拘束した。
もう何も恐れることは何もない。
「あはは、これこそが本当の王家の姿なのだ。勇者を恐れて憎むべき魔族と馴れ合ってビクビクしている王なんておかしいだろう?」
ハイデギアは高笑いしている。
魔法を阻害する術式の刻まれた牢の中で勇者エリアは膝を抱えている。
「守れなかった。みんな死んでしまった。」
涙を流すばかりで何もする気になれない。
「魔王様ハイデギアは勇者エリアを公開処刑するようですよ。」
スーが言う。
「助けないのですか?」
マヨルは答えない。
黙ったままパンケーキを食べている。
政変があってすぐの事大聖女エリミリア様がマヨル達の部屋に来た。
「魔王城の結界を解く。魔王フーハ ズーネヨマ、魔族を連れて入城するのだ。」
オレの本当の名前ってそれなん?
ちゃんと考えてつけないとダメじゃん。
それからジタバタとシェード達の一族の力を借りて王都内の魔族や獣人族、エルフなど亜人族と呼ばれる種族をマッピングした。
集めると一網打尽にされてしまうからね。
マッピングしたところで広範囲な上に特定の種族対象に指向性を持たせた転移魔法を発動する。
膨大な魔力を持つ魔王ならではの魔法だなって、出鱈目だ。
「ユーリハ伯爵とシャデリーヌお嬢様も領地に戻る途中で王国軍に拘束されたようです。」
「エド、お前はどうする。」
「俺はハイデギアを倒す。俺でなくとも良い、あいつ以外の者を王にする。魔王よ、俺に力を貸せ。
「ならば王国内の反ハイデギア派の貴族に手紙を書け。」
「お前を廃嫡した王家の者はいない、お前も正当な王家の継承者だ。国を2分させ騒乱を起こせ。」
「それが誰の得になる?」
「もちろん魔族を利する。だがお前がそうやって人族を分別する事で人族は滅びずに済む。」
「このままなら....あるいはエリアやジャッドになにかあればオレはほんの一握りの人族以外は全てを滅ぼす。」
「お前は俺に重責を負わせるのだな。」
「それこそが貴族であり王族であるお前の役割だ。だから人々は王族を尊び、ただ飯を食わせて威張らせているのだ。」
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