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第11話 ダンジョン
しおりを挟むなぜか取り巻き達にダンジョンに連れてこられてしまった。
エリアとジャッド(本当はシャデリーヌって名前のお嬢様なんだけど、それで呼ぶとデレすぎて気持ち悪いのでジャッドでいいか?)も一緒。
でも、このダンジョン全然モンスターが出てこない。
「おかしいな、いつもならこの辺でゴブリンとかコボルトとか出て来るんだけどな。」
エドの取り巻きの1人ギグスが言う。
年齢の割にしっかりとした体格だ。
ハルバードを背負っている。
突く、切る、叩くと汎用性は高いが結構な熟練度が求められる武器だ。
この子達のレベルで大丈夫だろうかと心配してしまう。
いくらゴブリンでも油断すると負けちゃうよ。
「変だよ、何にも出てこないのにあっちこっちにドロップアイテムだけ置いてあるなんて。」
「こんな事初めてだよ。」
「そりゃ勇者なんか連れて歩いたらモンスターだって逃げ出すだろうよ。」
とさりげなく勇者のせいにする。
「ええ?僕のせいだっていうの?」
勇者は不満そうだ。
「僕が1人で来た時はゾロゾロゴブリンがやって来たよ。」
「その時より強くなったんじゃないか?。」
エドが言う。
そうだ、そうだ勇者のせいだ。
心配でついて来たキューの視線が怖い。
魔王様に対してモンスター達が手出し出来るわけないじゃない。
キューがボソボソ口の中でつぶやいている。
モンスター達は魔王様見たさで木陰や草陰で息をひそめている。
「ああ、苦節1000年ついに魔王様のご尊顔を拝することができた。なんという幸せであろうか。」
みんな涙と鼻水でぐちょぐちょだ。
「ねえ、もうさー。モンスターは出てこないしー。でもー。ドロップアイテムはいっぱい手に入ったからー。ダンジョンのそばのうどん屋さんに行こうよ。」
「そだなー。お腹すいちゃったしな。」
ところがモンスターの中には勘違いする奴もいる。
「魔王様が、小さな魔王様が勇者と剣士に捕まっている。」
「どーする?助ける?」
「でも相手は勇者だし、絶対勝てないよ。」
ゴブリンとコボルト達が話しあっている。
それがマヨルには聞こえる。
魔族だけに聞こえる声で呼びかける。
「何言ってんだ、お前たち。
誤解だからな絶対出てくんなよ。」
ゴブリンが泣きくづれる。
「ああ、魔王様おいたわしい。」
「だから違うって言っているだろう」
「こうなったら私が囮になって魔王様を助けるわ。」
コボルトが勇者に向かって突っ込んで来る。
「魔王様ー。」
勇者が剣を構える。
マヨルは、ぴょんと勇者の頭の上を飛び越えてコボルトのしっぽを掴むとポイっと木々の奥に放り込む。
ついて来ていたキューがそのコボルトを掴んでダンジョンの奥に走り去った。
とっさに認識阻害の魔法を使ったからなんとか誤魔化せたかなと思っているとゴブリンが草の陰から泣きながら走って来るのが見えた。
エドの取り巻きや勇者エリアが剣を抜く。
待て待て、あいつらに戦意なんてなんにもないだろう?
まあ涙と鼻水でぐちょぐちょになった魔物が向かって来たらそれだけで充分嫌だろうけどな。
まごまごしていると急に黒い影が視界を覆う。
ドスーンっと上からワイバーンが降って来た。
どうやらこいつも木の上の方にしがみついていたのだが魔王にあった事に感激し過ぎて落っこちて来たようだ。
視界が奪われたのをいい事にキューが飛んできてゴブリンやワイバーンをふん捕まえてダンジョンの奥に去っていく。
間一髪で誤魔化せたようだ。
ダンジョンの奥では涙と鼻水でぐちょぐちょになったモンスターや魔物達にキューが説明をしていた。
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