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第9話 王宮追放
しおりを挟むザブーンと頭から水を浴びせかけられた。
「あ、あれ?ここは?」
王宮の中庭の吾妻屋の床でエドワンク王子が目を覚ます。
「いい気なもんだな、王家にさんざん恥をかかせてお昼寝か?」
継承権第6位のハイデギア王子が倒れているエドワンクの胸に足を乗せて言う。
「お前の継承権は剥奪されたぜ。早いうちに王宮を出て行くんだな。
失敗した。
はじめはあのちっちゃいマヨルって魔族を早くから王宮に取り込むつもりだったのに。
この世界は魔族に対してあまりにも理不尽な程過酷だから。
あんなちっちゃなかわいい奴すぐにどっかのバカ貴族のおもちゃにされて殺されてしまう。
それまで面倒を見ていた魔族を使えば加減して少し怖い目に合わせるぐらいで言う事を聞かせられると思ったのに。
何故かみんなあのちっちゃい魔族に寝返ってどこかに行ってしまった。
どんなに気にかけても魔族は人族に心を許すことはないって事なのだろうか?
継承権の剥奪?もともとあってもなくてもどうでもいいぐらい低い継承権なんかどうでもいいんだけど、王宮から追い出されるのにはまだ準備が足りない。
多分母方の実家預けになるのだろう。
残念だが仕方がない。
「あれ?こいつ王宮に置いて来たんじゃなかったのか?」
聖女エリミリア様に連れられて部屋に入ってきたエドワンクを見てガーが言う。
「えー。確かに置いて来ましたよー。」
黒づくめの女子、シェードが言う。
エリミリアはエドワンクを部屋の中に押しやって言う。
「お前たちの部屋は広げてやるから、今日からこの子の面倒も見ろ。」
そう言って数枚の金貨をスーに渡した。
エドワンクの世話代って事なのだろう。
金貨には聖女エリミリアの横顔が描かれている。
通称エリミリア金貨と呼ばれ現行のドルクル金貨の100倍の価値がある。
聖女様ってとっても高圧的。
でも、この方とっても怖いのでみんな「はーい。」っていい返事をする。
エリミリアは俺のひいばあちゃんだ。
この人全然年取らないし死なない。
噂ではすでに5000年は生きているらしい。
母はこの人の孫なのでここが俺の実家になる。
母は冒険者なので今は他国のダンジョン攻略に行っている。
母は若い頃王様と一緒にパーティを組んでいてそれでいろいろあって俺がいるって訳だな。
王様が俺を王宮から出したのは王宮で上位の継承権を持つ兄達にいじめられていたのを知っていたからだと思う。
王様と顔を合わせることは殆ど無かった。
それでも極たまに後宮の母のところに来る事はある。
その度に母に平謝りしているのを見かける。
王様はあまり外聞を気にかける人ではなかったが王家のしきたりには縛られていた。
母はいつも「エドが一人前になったら後宮を出て行くわ。」と言っていた。
オレが勝手にそれを早めてしまったけれど。
「お前たちなんでここに?」
「王子様、後宮を出て来たの?奥様の予定よりだいぶ早いように思うけど?」
執事のメイヤーがいう。
「奥様はアンデラ国のダンジョンに行っていて来月の半ばまでは帰らないと聞いているけど。」
衛兵のスキッドが続ける。
「だから、なんでお前たちがここにいるんだ?こいつはいったいなんなんだ?」
エドワンクがマヨルを指差して言う。
「魔。」
「あーっダメ。」
「オー。」
「だからダメって。」
「弟。」
「そうそう、弟。」
「生き別れた弟。」
「みんながこいつの姉だって言うのか?」
みんな、うんうんとうなずいている。
「ふーん、まあ、そういう事でいいか。」
「まあ、しばらくは世話をかけるがよろしく。」
「それから、王位継承権は剥奪されたからもう王子じゃないんで、これからはエドって呼んでくれ。」
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