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第2話 学校に行く?1
しおりを挟む「あら、あんたも学校に行くの?」
オレ達が間借りしている教会の主人でもある聖女エリミリアが声をかけてくる。
オレはビクッとして返事をしようとするのだが「ああ。」とか「うう。」ぐらいしか声が出ない。
だってこいつ1000年前に魔王を討伐した勇者のパーティの1人だったんだ。
どうやらオレが復活した魔王だってばれてないからいいものの、もしもばれたらどうなることか。
「マヨルも10歳になったのね。お姉ちゃん達も大変だったんだから感謝するのね。」
ん?あれ?オレ10歳っていう体になっていないけどな?
聖女はオレの心を読んだみたいに説明をする。
「魔族っていうのは何千年も生きるんだからそんなにすぐに大きくはならないわよ。だから心配しなくていいわ。」
しかしよりによって聖女に世話になっているって....。
まあ、あいつらも苦労したんだろう。
3人が扉から顔を出して心配そうに見送っている。
あいつらもこれからそれぞれの職場に出かけていくんだ。
生活費を稼がないとね。
学校がある区画に近くなるとだんだん歩いている子供が増えてくる。
「おい、おまえ。」
誰かが呼びかけてくる。
誰とは言っていないので知らんぷりして歩く。
「無視すんなよ、そこのちっちゃい魔族。」
「こっち見ても私は魔族じゃなくて獣人族だからね。」
迷惑そうに猫耳の子に言われた。
見回すと確かに魔族はオレぐらいしかいない。
声をかけて来た人間は背中に大剣を背負って、いかにも剣士と言った格好をしている。
子供だけれど。
「おまえ、魔族のくせに堂々と道の真ん中歩いて学校に行くつもりじゃないだろうな?」
「き、きききき、きまりだからね。」
うわ、かんだ。
「きまりなー、魔族がなー。」
学校について差別がないとは言っても世の中的に差別がないわけじゃない。
人間達が言う魔族や獣人族などの亜人族は1000年前に魔王が討伐されてから肩身の狭い思いをしている。
あーっ、オレのせいか。
しかし人族も調子に乗りすぎだ。
「最初が肝心って、初めに自分の立場ってのをわからせてやらないとな。」
いきなり剣を振り回して来た。
小さくてもオレは魔王なのでそんな、なまくら剣に斬られる事はない。
「なんだ、こいつちょこまかと。」
そう言いながらそいつは剣に魔力を這わせる。
「コラーっ、ジャッドまた小さい子をいじめている。」
剣を構えた人間とオレの間にオレより少し大きいぐらいの赤毛の子が飛び込んでくる。
「なんだよう、エリア。勇者ぶって正義の味方か?おまえだって小せえじゃねえか。」
「うるさいー。すぐに大きくなるわ。」
なぜかエリアは腰に手を当てて胸を張っている。
なななな、なにー。勇者だとー。
まままま、まずいー。
にににに、逃げないとー。
「大丈夫、僕がいるんだから。」
うわあ、勇者にフードを掴まれたー。
おまえが一番大丈夫じゃないんだー。
こいつ1000年前にオレの首を刎ねた勇者にそっくりじゃん。
「魔族が女の子に庇われて震えているってのは笑えるじゃねえか。」
こいつ全然やめる気が無いぞ。
「わからせてやらないとその内人間に殺されちまうんだよ。」
ジャッドは無造作に剣を振る。
だいたい剣を振る前にはタメのような初期動作があるもんなんだが、それがないので避ける動作が一瞬鈍ってしまった。
「あ。」
「あ。」
何故かジャッドが驚いている。
斜め掛けしていた肩紐が切れてカバンが地面に落ちた。
オレの感情が一気に爆発しかける。
たまたま通りかかった聖女エリミリアが膨れ上がったオレの魔力を抑え込む。
勇者がオレを見て目を丸くしている。
ジャッドは腰を抜かして座り込んでいる。
オレは地面に落ちたカバンを拾い上げる。
何故かわからないけれど涙が出てきた。
心は2万年を生きた魔王のはずなのに6歳の体に引かれるのだろうか?
あいつらが....スーやガーやキューがオレの為に働いて買ってくれたのに....。
「お、おい魔族の子、どこへ行く学校はこっちだぞ。」
エリアが言う。
ジャッドがオロオロしている。
2人は魔族の子がカバンを拾って学校と反対方向に歩くのを見ていた。
「ジャッド、やり過ぎだよ。あいつ、もう学校に来ないかもしれないよ。」
「だって、最初に....。」
ジャッドは別に魔族が嫌いな訳じゃない。
ただ本当に魔族を憎んでいる奴らもいるから免疫をつけてやるつもりだったのだが.....不器用過ぎた。
「人族はいつまでそんなことをやっているんだ?」
エリアが苦々しく言う。
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