Lv.1の少女勇者とショタ賢者の異世界冒険記

第61話 魔神

「それで次はだれが行くんだ？」
タトが言う。

タトは強靭な甲羅を持った魔神で通り過ぎるだけで周辺を押し潰し甚大な被害を与える恐ろしい魔神。

と言ってもすでにレオパとムスタとカーブはパエリに鎮められている。

しかも一撃。

魔神なので死ぬ事はないけどすっかり弱体化している。

レオパは尻尾に蓄えていた魔力がすっかり無くなって、いつもはぷっくりと太いのが細くなって小さくなってしまった。

ムスタは頬袋が空っぽだし、カーブは幼体に戻ってしまっている。

いずれも元の力を取り戻すには1万年単位の年月がかかるだろう。

パロやハーリィ、モモはあからさまに嫌な顔をする。

「だって勝てないってわかっているのにわざわざ勇者の前に出て行くのって嫌ですよ。」

半泣きだ。

「それに次から次へと勇者の前に出て行ってぽこぽこ負けたらアップデートまでの繋ぎにもならないんじゃない。」

パロが言う。

パロは色鮮やかで強靭な翼と嘴を持つ魔神。

「そんなことレオパがやられた所でわかったはずなのに今更ずるい。」

「ムスタもカーブも自分なら勝てるとか言って勇んで行ったじゃん。」

「やられた組」が黙り込む。

「4柱いっぺんに行ったらいいんじゃない？」

ハーリィが言うけど「これから組」の反応は鈍い。

ハーリィは全身に強力な槍の生えた攻防一体の魔神。

「それで勝てる？」

誰も目を合わさない。

大山脈地帯の深部の谷間にある大神殿に沈鬱な空気が流れた。

「出るぞ、出るぞって雰囲気だけ出して行かないってのはどう？」

モモがいい加減なことを言う。

モモは手足に強靭な膜を持ち重力を司る魔神。
超スピードで空から降りてくるまさに神出鬼没の魔神だ。

それでも他の「これから組」の共感を得たようだ。

4つ「いいね」がついたところでその方針で行くことにした。

「やられた組」の3柱は不満みたいだけれどこのまま全柱やられると大神殿の維持にも差し障るので納得するしか仕方がない。

で具体的にどうすんの？

「そーだなー。迂闊にアピってここがばれて乗り込まれても困るしなー。」

みんな考えあぐねている。

「最近人族の間で動画を映す魔導具が流行っているのを知っているか？」

パロが言う。

「それでな、そこに魔神が出るかもって動画を配信するんだ。」

「出現する場所を適当なところにして置いたらとりあえずアップデートまでの時間稼ぎは出来るかも。」

「そーだなー、いい加減な気もするけど他にアイデアもないしなー。」

「ねーねーアバターはどうする？私かわいいのがいいな。」

ハーリィってば主旨が変わってないか？

「とりあえずかわいい女の子がいいんじゃないか？いいねがいっぱいつくし。」

モモもか？