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第18話 ダンジョン3
しおりを挟む「この作戦は失敗ですね。」
モクモクと上がった香草の煙に涙を流しながらゴホゴホむせていると魔物を集めるどころか隠れていた最下層の隠し部屋に冒険者や勇者達が雪崩れ込んできた。
「こんな所で焚き火していいんか?」
冒険者の1人が言う。
「時々焚き火してスープ温めてる奴いるからいいんじゃね。」
他の冒険者が答える。
「バーベキューしよう!」
パエリが言う。
また急だね。
「ドロップアイテムのお肉が沢山あるし、美味しくて楽しいよ。」
帝国の兵士達はなんだかよくわからないうちに冒険者達のバーベキュー大会に巻き込まれて作戦どころじゃ無くなってしまった。
「ムール、インベントリからエールを出してよー。キンキンに冷やしてー。」
じきに歌い出す奴や踊りだす奴まで出てきて大騒ぎになった。
魔物やダンジョンマスターまで一緒に踊っているし。
「美味しいなあ。」って言って気安く話しかけてくるやつがいる。
なんだかサイズ感と雰囲気がオレに似ているような気がする。
こいつちっちゃいけど角が生えてるから魔人だよね?
鑑定してみたら魔王じゃん。
しかもどえらい強い。
なんていう魔力量だ。
遠慮容赦なくお肉をパクパク食べる。
「君、最近こっちの世界に来たんだろう。魔力量が普通じゃなかったからすぐにわかったよ。」
魔王が話しかけてくる。
「魔王も転生者なのか?」
「ここでは魔王って呼ばないでね。マヨルって呼んで、君はムールって言うんだね。賢者様か。これからもよろしくね。」
そう言ってポンっと消えた。
後で聞いた話しだと今は魔王がどこにいるのか誰もわからないそうだ。
でも時々は人間のふりをして人族の街に遊びに来ているようだ。
まあ、今は知らないふりをしていた方が良さそうだ。
「申し訳ございません。作戦は失敗しました。」
そう言ってシュギル子爵に謝罪する十人長と彼を派遣した子爵の相談役。
十人長の報告を聴いて子爵はほっとした。
危なかったー。こんなの皇帝に知られたら大変だよ。
見逃してくれた勇者には感謝しないと。
それにしてもダンジョンでバーベキューって勇者ってなんなんだろう。
ちょっと羨ましい。
さすがにもう要らない忖度をして変な計略をする奴はいないだろうな。
シュギル子爵はそう思ったようだが皇帝の布告は上位の貴族から順番に届く。
下位の貴族になるとずっと後になる。
場合によっては届かないこともある。
「ふーん、それ面白い計画だね。」
クッピト男爵は出入りの商人の話しに興味を持った。
商人もこの計画が上手くいけば武器の需要も増して子飼いの工房も忙しくなって儲かるようになるだろうと男爵相手に力説した。
この男爵は爵位は低いが商人上がりなのでお金は持っている。
「スーリゲーブよ、わしが出資するからその計画進めてみよ。」
うまくいけば皇帝に喜んでもらって爵位も上げてもらえるかも。
「うひひー。」
変な笑いが出た。
出入りの商人がほくほく顔で帰ったのとは入れ違いに皇帝の布告が届いた。
「だ、旦那様。」
クッピト男爵はパタリと倒れた。
「どうすんのこれ?」
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