魔法大全 最強魔法師は無自覚

第89話●サバト1

「んー。そんな儀式あったっけ？」

マーリンが言う。

「あんたが知らないで誰が知ってんのよ。

クロウラが肩を落とす。

「儀式って言うよりお祭りだったんじゃないかな？」

ファルコもうろ覚えの様だ。

確か魔女達の催しがあったのだけれど3000年に一度って言うと誰も知っているものがいない。

サバトって悪魔崇拝の夜宴の事とか安息日の事だったり。

そんな3000年に一度ってものじゃない様な........？

とはいえここは独自のファンタジー世界だからなんでもありか？

それでも基本的にはあの世界の常識的な事は踏襲しているもんじゃないのかな？

「魔女ってのは相変わらず伝統や決まり事って言うものに疎いというか関心がないんだな。」

ソッペ・カヤ神教の異端審議官でもあるアルテラット神官長が言う.

なんで学園の食堂に魔女とは対立関係にあるはずのソッペ・カヤ神教の神官長が来てんの？

「稀代の魔女の面々が揃っているんだから無視できんだろう？しかもその魔女達がサバトを忘れてしまっているって笑えん話じゃないか。」

「じゃー、お前は知ってんのかよ。」

マーリンが言う。

「そう言うことを大事に記録して歴史の代弁者としての働きをするのもソッペ・カヤ神教の教義だからね。」

「そんで魔女を絶滅させたとか嘘八百伝えるんじゃないのか？」

ファルコがいう。

「なんだとー。そりゃあんたが勝手に思い込んだだけじゃないのか。ちっちゃいあんたが魔女達がいなくなってピーピー泣いてたって記録があるぞ。」

アルテラット神官長も魔法師相手になかなか負けてない。

「ファルコも突っかかるなよ、早いとこサバトについて説明しておくれ。そのために来たんだろう。」

神官長は説明を始める。

かつては、この世界は『ベータ』と言われていた。

ん？  β？   β版の事？ 
まあ元はゲームだし。

3000年ほど前にサバトという儀式があって大陸中から魔女が集まって大宴会をしたらしい。

その際に様々な精霊や神たちが集まって大きな祝福をすることで世界の魔素濃度をあげ再構築したということだ。

その後この世界は『バージョン１．０」と呼ばれるようになった。

なんだ？アップデートするのか？

そう考えるのは転生者であるギドぐらいか？

今は細かなアップデートを繰り返して7.86になっているんじゃないかな？

次にDXが発売されてその後DXIIになってこのシリーズは終了したんだ。

シンプルなシステムで結構好きなゲームだったんだけれど。

確か最終的にはDXIlのヴァージョンは12.6ぐらいだったような.....？

それにしてもゲームをプレイしている時にそんなイベントなんてなかったけど？

もちろんオールドマスターウィザードなんてのもいなかったし。

ゲームって考えても実際にこの世界にいるとNPCであるはずのキャラクターにもちゃんと存在感があって普通にこの世界の住人として生きている。

むしろ転生者である自分についての方が違和感がある。

彼らの生活の中に割り込んだ余所者感がなかなか抜けない。

周囲の人々はそんな事はまったく感じていないようだけれど。

すでにレテやルトラウデは今の状況に飽きた様で食堂の新メニューのフルーツパフェを食べている。

神様や天使達にも人気のようだ。

ギドもあまりにもグダグダすぎて眠くなってファルコの膝の上でうとうとしている。