上 下
79 / 93

第79話●暗冥の魔法師1

しおりを挟む


「闇の魔法師 暗冥の王ペトロニウス・グローヴズって本当にいるのかしら?」

レテがギドに話しかける。

グローヴズ公爵家はカルナガリア王国に確かにあるしエリミリア大聖女の実家でもある。

ペトロニウスは大聖女の弟と言う説もあるが本人が社交界などの表舞台に一切出てこないので明らかではない。

「呼んだ?」

若い女の子の声がした。

え?

唐突に孤児院の食堂内に転移陣が現れる。

実体化して来たのは某ネズミーランドに遊びに行ったお姉ちゃん達みたいに頭に丸い耳の生えたメイド服の子が3人。

続いて小さなコウモリが飛んでくる。

コウモリはパーシコ 達が食べているおやつがあるテーブルまで行って小さな女の子に人化した。

弟子団のみんなは「おーっ、かわいい。」と歓声を上げた。

いや、そういう場合じゃないでしょ。

最後に男の子が実体化する。

ネズミっ子の1人が言う。

「呼んだ?暗冥の王 闇の魔法師ペトロニウス グローヴズよ。」

えー名前を出しただけなのに来ちゃうんだ。

それとその名前自分で言っちゃうとちょっといたい。

「あなたがたに出来た事がペトロニウスに出来ない訳がないでしょ?」

なんでそこでネズミのお姉ちゃんが威張ってんの?

魔法師ならアカシックレコードに常時アクセスしてアップデートのチェックぐらいはしているからね。

「ふーん、オールドマスターウィザードってまだちっちゃいんだ。」

ペトロニウスが言う。

周囲のネズミっ子が驚く。

「ペトロがしゃべった?!」

ん?ギドの同類なの?

急激に孤児院の食堂内の魔素濃度が上がる。

なんだか弟子団やレテも盛り上がっている。

様々な攻撃と防御の魔法の魔法陣が部屋いっぱいに明滅する。

大花火大会の様相を呈して来た。

ペトロニウスはギドだけじゃなくレテや弟子団の魔法にも余裕で対処する。

そしてまるでギドを喜ばせるかのように高度に制御された珍しい魔法を使う。

ギドの目がぱっちり開いてワクワクしているのが分かる。

二人は向かい合ったまま動いていないように見える。

恐ろしい速度で相互の魔法を無力化する。

魔法陣が形成されると完成する前に消えて行く。

光が交錯する。

最後にポンっとくす玉が弾けてギドの頭の上に紙吹雪が落ちる。

ペトロニウスとメルデギドが笑いころげている。

お互いに「すごい、すごい、面白ーい。」って言っている。

「メルデギドもその領域に行っていたんだね。でも、ものすごいのは本当にゼロから魔法師になったってこと。君は凄いねー。どんだけ魔法が好きなんだろう。撫でてやろう。」

ペトロが頭を撫でたことでギドの魔胞はさらに大きくなった。

「魔法大全があったんだよ。凄く嬉しかったんだ。」

「あんな物、普通は読めないんだよ。メルデギドの持っている原書は本当は開く事もできないんだよ。」

「メルデギドはあの本を開いた時にはもうマスターウィザードになっていたんだよ。」

「この言葉をどこかで見たはずだよ。」

「原書の背表紙のどこかに書いてあるんだ。」

「それが読めた瞬間から人は本当の魔法師になるんだ。」

「でもほとんどの人は読むことが出来ない。」

「聞き取るだけでもいいんだけれど聞こえないんだ。」

「#%^*+=_\;||<>」

ペトロニウスが何かをつぶやく。

メルデギドははっとする。

そうだ、背表紙に書き込んであったその言葉を見た途端に魔法がなんなのかわかったような気がしたんだ。

「多くの魔法師にはそれを聞いても聞いたことすらわからないんだ。そしてそれが限界になる。」

「似た物同士なら話しが出来るのね。」

「ツッピ、多分僕達は言葉を発していないと思うんだけど。」

ツッピと呼ばれたネズミっ子達はもう退屈しているみたい。
首をすくめて他の2人と顔を見合わせている。

ギドがペトロと普通に?(声は発していないので何を言っているのかはわからないけれど)会話している様子を見て出番がないのでレテはぼんやりとお茶を飲んでいる。

二人とも魔法オタクで話しが長そうなので放っておく事にしたんだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた! もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する! とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する! ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか? 過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談 小説家になろうでも連載しています!

異世界転移は分解で作成チート

キセル
ファンタジー
 黒金 陽太は高校の帰り道の途中で通り魔に刺され死んでしまう。だが、神様に手違いで死んだことを伝えられ、元の世界に帰れない代わりに異世界に転生することになった。  そこで、スキルを使って分解して作成(創造?)チートになってなんやかんやする物語。  ※処女作です。作者は初心者です。ガラスよりも、豆腐よりも、濡れたティッシュよりも、凄い弱いメンタルです。下手でも微笑ましく見ていてください。あと、いいねとかコメントとかください(′・ω・`)。  1~2週間に2~3回くらいの投稿ペースで上げていますが、一応、不定期更新としておきます。  よろしければお気に入り登録お願いします。  あ、小説用のTwitter垢作りました。  @W_Cherry_RAITOというやつです。よろしければフォローお願いします。  ………それと、表紙を書いてくれる人を募集しています。  ノベルバ、小説家になろうに続き、こちらにも投稿し始めました!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

異世界は黒猫と共に

小笠原慎二
ファンタジー
我が家のニャイドル黒猫のクロと、異世界に迷い込んだ八重子。 「チート能力もらってないんだけど」と呟く彼女の腕には、その存在が既にチートになっている黒猫のクロが。クロに助けられながらなんとか異世界を生き抜いていく。 ペガサス、グリフォン、妖精が従魔になり、紆余曲折を経て、ドラゴンまでも従魔に。途中で獣人少女奴隷も仲間になったりして、本人はのほほんとしながら異世界生活を満喫する。 自称猫の奴隷作者が贈る、猫ラブ異世界物語。 猫好きは必見、猫はちょっとという人も、読み終わったら猫好きになれる(と思う)お話。

処理中です...