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第59話●使徒2

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なにせどろっどろの、こってこてに汚れているので男の子なのか女の子なのかも容姿もあったもんではない。

それでもなんだか嬉しくて、とりあえず手を引いて家に連れて帰った。

ちょこちょこと小走りになってついてくるのが可愛かった。

今日の買い物は出来なかったけれどすぐに困るものでもない。

家に帰ると母親は大きな桶に魔法でお湯を張って子供を洗う。

俺もついでに湯浴みをする。

母親がゴシゴシと子供を洗って汚れがなくなると現れたのは真っ白な髪とさらに透明なほど真っ白な肌の女の子。

目が赤と緑で左右の色が違うので不思議な感じがするけどぱっちりと大きな目に長いまつ毛。

まだ幼いせいなのか女の子は裸なのだけれど恥ずかしがる事もない。

俺の方が緊張してボーっとしてしまった。

「早く拭いてあげなさい。」

そう言って母親は俺にタオルを渡すとキッチンの方に行ってしまった。

女の子が体を拭く俺をじっと見ている。

「見たじゃろう。」

女の子が喋った。

高い透き通った声で。

「おまえ、わしの体を見たじゃろう。」

「あーんなとことか見てはならんところをいろいろ。」

無表情だが怒っているのだろうか?

急に俺の目の前に文字の書かれた映像が現れた。
こんなのは初めて見た。

俺の名前とレベル、スキルやHP、MPなど鑑定の儀の時に神官に言われた事が書かれている。

「それはメニュー画面じゃ。」

「おまえはつがいしか見てはならんものを見た。」

「じゃがおまえはわしのつがいにはなれん。」

「じゃから使徒にする。」

「わしの祝福を受ける代わりにわしに仕えるのじゃ。」

俺のメニュー画面に「ジュの使徒」という文字が現れるのを見た。

「ジュ?」

「ジュスティラステスじゃ。」

母親が戻ってくると今まで話しをしていたのが嘘の様に女の子の雰囲気が変わった。

目を半開きにしてボーっとしている。

俺の意識も何か目が覚めて現実に戻って来たかの様に感じた。

夢?

「これを着せてあげてね。」

そう言って母親から受け取った服を女の子に着せた。

後ろから抱き上げてパンツに足を通させたりしていると本当にただの小さな子供なんだけど。

「そうじゃろう。それでいいんじゃ。」

ジュは振り向いて俺の顔を見上げてそう言う。

ジュが何者で使徒がなんなのか何もわからなかった。

ただそれまであったはずの自分の名前がなくなった。

そして誰も、母親でさえもそれを意識する人はいなかった。

俺は「シト」と呼ばれるようになった。



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