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第33話●魔国1
しおりを挟む純粋な結晶の様な魔力。
圧倒的な純度と量。
それとなく隠蔽しているがギドには隠せない。
完全なシンメトリーの整った顔立ちは美しさを超えて冷たい構造物を思わせる。
黒髪に赤い目、真っ白な肌。額に小さな角がある。
振袖をアレンジした様な服。
誰の趣味なんだろう。
ギドをまっすぐに見ている。
「ギドってばまた女の子見てるの?あら?あの子物凄い魔力。あの目と黒髪に角って魔族じゃないの?どうしてここに?」
レテはあの魔力の圧にもたじろいだりしないんだ。
さすがは大魔法師だね。
学園の食堂で昼食を食べている時にパッて現れたんだ。
転移魔法を使ったんだね。
「あなたがオールドマスターウィザード メルデギドなの?」
さらに短距離転移で目の前にやってくる。
おでこがあたっちゃうよ。
「ああ。」
「そうよ、彼がオールドマスターウィザード メルデギドよ。魔族がなんの様なのかしら?」
レテってばそんな強気な....。
「ああ、私は魔王アーシェルよ。あなた、あなた方が言う魔王戦線に興味はあるかしら?」
魔王戦線!
すっごい魔法がガンガン発動されて攻防する魔法の展覧会。
色んな魔法が見られて面白いかも。
「ギドってば危ないとか考えないの?」
魔王が誘ってくれてるんだから問題ないよ。きっと。
完全に遠足気分だね。
「さすがは真正大魔法師、知識のために敵味方は超越しているのね。」
「うう。」
「善悪も敵味方も関係ないし興味もないわよね。ギドは魔法と女の子にしか関心がないのよ。」
女の子のところ余計だぞ。
アーシェルはまばたきをしてギドを見てふふんと鼻を鳴らして「現場を見ればわかる。」と言って転移魔法を展開した。
アーシェルに連れられて魔国チェルゴスの王都アングリスにある王宮に来た。
魔国っていうくらいだからもっとおどろおどろしたところかと思っていたのだけどそうでもない。
完全に和風という訳でもないからむしろ前世の日本のイメージがある。
たくさんの火山があって噴煙がところどころ上がっているもののその周辺には森林が続き田畠がある。
豊かな国であることが窺える。
王都アングリスは山の頂に城を持つ城下町のような作りをしている。
周囲に防壁などはないが堀が張り巡らされている。
空が飛べるのだから防壁は役に立たないんだろう。
山の頂に聳え立つ城はテレビドラマで見たCGで再現された安土桃山城に似ている。
ギド達は城下町付近に転移して来た。
「お館様が戻られたのか?」
厳つい髭親父が出迎えにくる。
水牛みたいな角が生えている。
「いや、パパに似ているけれど違うわ。」
アーシェルにそっくりだがやや小ぶりな女の子が言う。
「パパに似ているから代わりに連れてきたのかしら。それにしちゃちっちゃすぎるんじゃないかしら?犯罪ね。」
「バカ、違うわよスウェル。この子はオールドマスターウィザードなのよ。」
「なんで今頃そんなのがいるの?」
内緒だよ。
「ふーん。生意気ね。」
スウェルはちょっとギドの頬を摘んではっとする。
「なんなのあんたの魔力。量も波長も変よ。
スウェルもすごい魔力量だ。
髭親父は竜車を用意して来た。
竜車には森に住むフォレストザラマンダーが使われている。
馬もいない訳ではないが竜の方が少し賢いし丈夫なんだろう。
街にはいろいろな種族の者たちがいる。
獣人やエルフやドワーフ、竜人族など種族の見本市だね。
「あ、あれ。」
「温泉饅頭が売っているのね。この辺は火山地帯だから温泉が有名なのよ。」
レテはギドの手を引いて竜車に乗る。
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