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第32話●ファミリー
しおりを挟む久しぶりに孤児院に帰ってくるとなんだかいつに無く静か。
扉を開くと孤児達が並んでひざまづいている。
「マスターお帰りなさい。」
いったいどうしたの?
何かすごく緊張している様子。
いつもならきゃーきゃー騒いでいて、少し落ち着いてからくっついてくるのに。
「なんか様子がおかし・・・あっ。」
レテが不思議そうにしていたのを急に口ごもって硬直する。
「久しぶりねレテルティア。あなたちゃんと私のかわいいメルデギドのお世話をしていたのかしら。」
「ゲーっ。パトリシアお姉様、何故ここに?」
「おーほほほほ、私を誰だと思っているのかしら。まあ、でも今回は少し手こずったわ。メルデギドは元々魔力を持っていなかったから追跡しようにも魔力紋がわからなかったから。」
「でもあなたいい仕事をしたわ。」
「え?何か?」
レテは完全に萎縮している。
パトリシアもまた稀有な天才魔法師なのだ。
既に学園も卒業していて宮廷魔法師団の団長になっている。
「あなた母に手紙を書いたでしょう。多分手紙を書く前にメルデギドの髪を触ったんじゃないかしら。そこからメルデギドが魔力を持つ様になった事と魔力紋がわかったのよ。うふふふふふふ。もう私から逃げる事は出来ないわよ。」
冷たく凍った空気がふわっと柔らかくなる。
「メルデギドー。」
避けられない速度と逃げられない力でぎゅっと抱きしめられる。
「あーっ、メルデギドの匂い。癒されるー。」
ギドは暴力的な丸い柔らかい魔法師ものを顔面に押し付けられて呼吸困難に陥っている。
「そんな無茶をするとメルデギドが死んでしまうわよ。」
そう言ってひょいとパトリシアの拘束を解くとさらに暴力的な丸い柔らかいものが顔面に押しつけられる。
「あら、お母様?どうしてこちらに?」
パトリシアが首を傾げる。
その仕草だけなら天使の様なんだけど。
レテルティアはもう呆然として立ち尽くしている。
「あなたにわかったものが私にわからないわけがないでしょう?」
アナスタシアが言う。
アナスタシアもユルゲン・フォン・ランツァウ伯爵と結婚してパトリシアが生まれるまでは宮廷魔法師の副団長だったのだ。
「母上。そろそろ兄上をはなしてあげた方がいいと思いますよ。」
弟のニルスまで来た。
クタクタになったギドがソファに降ろされる。
そこに小さな女の子が2人飛びついてくる。
「何にも言わずにいなくなるなんてひどいですー。」
双子の妹のアーリンとアンネリーセだ。
この子達も鑑定の儀前だけど既に魔法が使える。
「メルデギド、弟子達はちゃんとしつけないとダメよ。この子達も学園で勉強させて宮廷魔法師団に入れるわ。メルデギド弟子団としてあなたを補佐させるわ。」
孤児達が救いを求める目で見てくる。
「うーん。」
「あら、そうね。先を急ぎ過ぎね。でもそれならメルデギドがちゃんと指導するのよ。」
何にも言ってないけどわかってもらえたみたいだ。
孤児達はほっとして床に座り込んでいる。
「あ。」
「兄上、父上ならそこに。」
ユルゲン・フォン・ランツァウは嬉しそうな顔をして部屋の隅っこで立っていた。
「メルデギド、よかった。みんな顔を合わせることが出来た。また家族でいられる。」
ギドがオールドマスターウィザードになった事でランツァウ家は侯爵に陞爵された。
ギドは勘当ではなく出家扱いとなっている。
オールドマスターウィザードは家や身分を超えた存在なのだ。
孤児、いやこれからは弟子と呼ばないといけないね。
家族はまたいつでも来れるからってパッと転移魔法で帰った。
レテはぐったりと座り込んでいる。
弟子達も同じでソファに倒れ込んだギドを取り囲んでくっついている。
魔力の補充もあるだろうけど何故かそうしているだけでMPの最大値が上がって行くから修行になっちゃうんだ。
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