30 / 52
第30話●しっぽと耳
しおりを挟むエルフの里があった大森林を出るとしばらく広大な麦畑の中の街道をすすむ。
ところどころに教会とそれを取り囲むように出来たこじんまりとした町がある。
どこも同じ様な作りの町なので同じところをぐるぐる回っているような錯覚に陥る。
ようやく麦畑が途切れると大小の雑木林のある草原地帯をすすむ。
小高い丘があったり川があったり起伏に富んだ地形だがギド達の乗っている馬車には関係ない。
先行する馬車が盗賊に襲われているようだ。
ギドは馬車の速度を上げて救援に向かう。
「盗賊っていくらでもいるのね。」
ギド達の移動距離と速度が速いから感じるだけで普通でそんなに遭遇していたら物流が成立しない。
とはいえ見つけたら潰しておかないと皆が安心して生活できない。
Gみたいなもんだな?
たどりつくと先行していた馬車は横倒れになっている。
護衛の冒険者は既に殺されたのか逃げたのか数人の騎士が馬車を守っているだけになっている。
盗賊が圧倒的な数で取り囲んでほくそ笑んでいる。
ギド達の馬車が1台ぐらい増えても戦力的に何の足しにもならないと思っているのだろう。
馬車の屋根の上に子供の男女が見えているが世間知らずの貴族の子供でただのカモにしか見えていない。
横倒しになった馬車には貴族の紋章が入っている。
ギドの馬車にもマスターの紋章とマジタリア魔法国の王家の紋章が入っているけれど多分見てもどこの紋章だか判別出来る人はあんまりいないと思う。
取り囲んでいる盗賊を容赦なく範囲魔法で始末する。
サンダーやらかなり規模を小さくしたメテオやコキュートスなど学園の課題のお披露目みたいにやりたい放題。
オーバーキルとか何にも考えていない。
阿鼻叫喚。
盗賊が逃げ惑っている。
冷静にただ魔法の構築と効果を分析しながら攻撃している。
盗賊1人1人を人間としては見ていないし彼らの苦痛や死に何の感慨も持っていない。
見た感じどっちが悪者かわからない。
だからと言って魔法師達はサイコパスでも精神異常者でもなんでもない。
普通の子供達だ。
60人程いた盗賊は3人を残して全滅。
死体を残しておくとアンデッドやレイスになって大変なので消し炭になるほどファイアで燃やし尽くした。
この3人はアジトを調べるために残しただけ。
イサンドロとヴァシュとルトラウデ、ピコがアジトを潰しに行った。
「マジタリア魔法国の魔法師?」
騎士のひとりがそう言う。
「間に合わなかった?」
レテが言う。
ギドが馬車を起こす。
馬は逃げてしまった様だ。
貴族の馬車の扉を勝手に開ける訳にもいかないので馬車ごとヒールをかける。
レテのヒールは強力なのでなんでも治っちゃう。
馬車の扉が開いて従者が女の子の手を引いて降りてくる。
周囲の状況を確認しているのだろうキョロキョロしている。
「マジタリア魔法国の王家の方?」
紋章がわかるのか?
「オールドマスターウィザードよ。」
レテが胸を張る。 まだないけど。
レテにジロリと見られた。
ミルグラス王国の貴族グアレ・フォン・リネカー伯爵の養女テイヨと侍女のクニラだそうだ。
獣人族の里に行く所だったらしい。
護衛がかなり居なくなってしまってこのまま旅を続けるのは難しいけどそれはミルグラス王国に戻るのも同じ。
ギドは別に急いでいないし獣人族の里にも興味があるからついていってあげればいいんじゃないかと思う。
レテがジーっとギドを見ている。
「テイヨの耳としっぽが気になっているんでしょ。あの猫耳触ってみたいでしょ。あー、しっぽなでたいって思っているでしょ。」
レテ、こーわ。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
11
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる