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第16話●教会
しおりを挟む「なんで魔法使いがいるんだ?」
ソッペ・カヤ神教の神官長アルテラットは言う。
「盗賊に攫われていた女子供を連れて来たみたいですよ。」
この地の神官が答える。
「ここに女子供を保護する施設はあるのか?」
「ヤルマル・ホルクネッラ教の教会と思っているんじゃないかな?一般人にすれば教会ならどこの宗派でも一緒だろうし。」
「ヤルマルの教会を案内してやれ。それからあの魔法使いを見張れ。」
そう言ってアルテラットは客室に戻った。
この街には珍しくソッペ・カヤ神教の神殿がある。
ソッペ•カヤ神教の本拠地はヘイルウッド共和国で他国には稀にしかない。
かつては異端審議会が猛威を奮って魔女裁判によって魔法使いを絶滅させた歴史を持つ。
その後国教となった大聖女エリミリアの属するヤルマル・ホルクネッラ教で教会を改革した魔術師ファルコ イエンツによってソッペ・カヤ神教の教会は弱体化された。
今は少数の信者で形だけ残っているに過ぎないと言われている。
「教会って言ってもいろいろあるのね。」
トラウデがピコの手を引いてついて来る。
「この神官さん親切ね、宗派の違う教会に案内してくれるなんて。」
レテが言う。
まあ貴族のお嬢様が来てるのに変な扱いは出来ないよね。
ヤルマルの教会まで来たところで
「後の手配はこの地の役人が引き継ぎますのでお嬢様方は宿にご案内します。」
とプリニーが言う。
宿の食堂で食事を済ませるとやっと解放された。
「明日お迎えにあがります。」
そう言って従者とともに近所の安宿に向かう。
安宿と言っても安全のためにはそれなりのレベルが必要だが。
お嬢様は別に構わないとはおっしゃるがなかなかそうはいかない。
お嬢様のアモローゾ伯爵家のおかげでさまざまな取り引きの機会を頂いておりそのおかげで商人としてやれていけているのだから。
いまでもそうなのかはわからないけれどレテルティアお嬢様の元婚約者ランツァウ伯爵の長子メルデギド様。
勘当と言われていたけど今は魔法を極めるために出家なされたと言う事になっている。
国からオールドマスターウィザードの称号を贈られている。
全く馴染みの無い称号だと思ったら1000年以上遡らないとその称号を持った人がいないのだから仕方ない。
まだ小さくてちゃんと話しも出来ない子供がどうなのかしらと思っていたら突然の無双ぶり。
いつの間に魔法が発動したのか何もわからないうちに盗賊達は全滅させられた。
雇っていた冒険者も何の手出しも出来なかった。
底知れない恐ろしさを感じた。
商人から何があったのか聞いた。
旅の途中で盗賊に襲われたり撃退するする事は珍しくは無い。
しかし、盗賊のアジトまで全滅させて捕らわれていた婦女子を助けて来るか?
しかも殆どあの少年が一人で?
神官長はあれはオールドマスターだと言っていた。
だとすると我々ソッペ・カヤ神教にとっては異端。
異端審議会で裁く必要がある。
私は表向きはソッペ・カヤ神教の神官だけどこの間試験で通ったので今は異端審議官だ。
暗殺術なども勉強して2級までとっている。
異端審議官になると手当と有給休暇が付くのでその内温泉などにも行けるかも知れない。
とか考えている内に少年と少女2人と幼女は宿に入ってしまった。
私もさすがにお腹が空いたし時間も遅いので帰ることにした。
残業手当は付くのだろうか?
教会に戻ると神官長がご飯を食べていて「あれ、もう帰って来たの?」と言う。
「ああ、はい、お腹が空いたので。」
と言うと。
「そりゃそうだよね。」
と言ってご飯を食べ続けた。
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