上 下
15 / 93

第15話●遭遇

しおりを挟む

「プリニー、この馬車凄く乗り心地がいいわね。新型なの?」

レテが急に気がついたみたいに言う。

トラウデは馬車に乗るのは初めてみたいなので違和感がないようだ。

この頃の馬車は車輪は木製で枠状に組まれたフレームに取り付けられている。

客室はフレームにつけられた太い皮の板で吊り下げられている。

一応サスペンションのつもりなんだろうけど左右に揺れるばかりで上下振動は緩和しきれていない。

長距離の移動はなかなかの苦行なのだ。

「いえ、以前から使っている物ですけど、確かに全然揺れませんね?」

何かに気がついたみたいにレテがギドの顔を見る。

「ははーん。ギドね。何をしたの?」

「ああ,ええと。」

「馬車を地面から10cm程浮ぶ様にした?だから揺れない?お馬さんも楽ちんで喜んでいる?何言ってんの?今度うちの馬車にもしてくれる?」

まだ何も言ってないのに。

広大な麦畑の間を通り抜けて森の中を通る。
森に入ると前後を守る冒険者達の緊張感が増すのが感じられる。

盗賊や魔物が出て来ることがあるからね。

ほらね。

カックンと馬車が止まる。
馬車の周囲に弓矢がパタパタと落ちる。
矢は馬車には届かない。
魔法障壁が張ってあるからね。
このまま無視して通り抜けても大丈夫なんだけど冒険者達がバラバラと馬車から降りていく。

「ギド、あんたも出るの?」

レテとトラウデも恐る恐る降りて来る。

「商人と貴族の子供だ。こいつぁいいぜ。」

嬉しそうにしている男の前に転移して立つ。

「な,なんだ急に。」

「おじさんは盗賊なの?」

「ギドがしゃべった!」

レテがびっくりしている。

「どこからどう見ても盗賊だろうが、ガハハ。」

「盗賊は死罪または犯罪奴隷。現場での処刑も認められています。」

ギドが淡々と宣言する。

「何言ってんだおめえ。」

とその盗賊の頭らしい男が言うのと同時に街道の両端に20個ぐらいの穴が並んで掘られた。

そこにたこ焼きの具の様に盗賊達がすこすこと入れられたかと思うと首だけ出して埋められてしまった。

「出せー。」「覚えてろー。」
とか威勢のいい事を言っているけどそのうちに「助けてー。」「なんでもするー。」とか言い出す。

でもあなたがたに襲われた商人達が命乞いした時に助けたことなんてないでしょ?

とりあえず埋めておけば魔物のおやつになったり、通りがかりの人が奴隷として売ってくれるかもしれないね。

涙目になって喚いているおじさんに質問する。

「おじさん達のアジトはどこなのかな?」

「そんな事教えるわけないだろ。」

って言うけどあーんって口を開けさせてニョロニョロする虫を食べさせてあげようとしたらペラペラしゃべった。

ふーん、この虫がなんなのか知っているんだ。

この虫を食べると不死身になるんだ。
ただし身動きは出来ない。
意識があるままこの虫のエサとしてお腹の中から食べられちゃうんだ。
怖いだろ。

本物だったらね。

これはただのミミズ。
それでも食べるの嫌だけど。

街道から外れて森の中に入って行くと低い丘があって洞窟があった。

見つかってしまったみたいで矢がピュンピュン飛んでくる。
障壁にあたって跳ね返るだけだけど。

弓を射っていた盗賊はレテが氷の矢でどんどん始末してしまう。
百発百中だ。

盗賊達は観念したのか洞窟の入り口に集まって盾を立てて槍や剣を構えている。

洞窟の中から女の人や子供が引き出されて来る。

「武器を捨てないとこいつらを殺すぞ。」

とか言っている。

そんな事に効果があると思っているんだ。

盗賊のすぐそばに行って盾に触れると盾は粉々になった。

女の人に突きつけていた剣も同じで砂の様に崩れた。

徐々に盗賊達にパニックが広がって行く。

地面に人数分の穴が開けられる。

洞窟の中にはかなりの盗品と貨幣があった。

法律的にはこれは盗賊を退治した僕達の物。
いいお小遣い稼ぎになった。

人質だった人達はすでに家族や村を失っていた。
この先の街の教会に連れて行く事にした。

一連の事が終って周りを見ると冒険者や商人がポカンとしている。

「何にもしないうちに盗賊を全滅させてしまうなんてこの子は一体なんなの?」

レテが自慢そうに言う。

「オールドマスターウィザード様よ。」

「それはドーナツの一種なのか?」







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

異世界転移は分解で作成チート

キセル
ファンタジー
 黒金 陽太は高校の帰り道の途中で通り魔に刺され死んでしまう。だが、神様に手違いで死んだことを伝えられ、元の世界に帰れない代わりに異世界に転生することになった。  そこで、スキルを使って分解して作成(創造?)チートになってなんやかんやする物語。  ※処女作です。作者は初心者です。ガラスよりも、豆腐よりも、濡れたティッシュよりも、凄い弱いメンタルです。下手でも微笑ましく見ていてください。あと、いいねとかコメントとかください(′・ω・`)。  1~2週間に2~3回くらいの投稿ペースで上げていますが、一応、不定期更新としておきます。  よろしければお気に入り登録お願いします。  あ、小説用のTwitter垢作りました。  @W_Cherry_RAITOというやつです。よろしければフォローお願いします。  ………それと、表紙を書いてくれる人を募集しています。  ノベルバ、小説家になろうに続き、こちらにも投稿し始めました!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。

karashima_s
ファンタジー
 地球にダンジョンが出来て10年。 その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。  ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。 ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。  当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。  運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。  新田 蓮(あらた れん)もその一人である。  高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。 そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。 ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。 必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。 落ちた。 落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。 落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。 「XXXサバイバルセットが使用されました…。」 そして落ちた所が…。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

処理中です...