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第11話●オールドマスターの仕事
しおりを挟むギドは魔法大全の写本と翻訳本を書いている。
クロウラ学園長に頼まれて二つ返事で引き受けてインベントリに引きこもって作業した。
学園長からするとすぐに出来た様に見える。
実際にはギドはインベントリで200年過ごしていた。
写本していると、また新しい解釈や発見があって楽しい。
調子に乗って100冊作ってしまった。
古代語を現代語に翻訳するのも面白かった。
なかなか当てはまる言葉や仕組みがないので現代語で発現する様に魔法を作り直したりしていると時間を忘れてしまう。
これも調子に乗っていろいろな解釈本を20冊作ってしまった。
さらに試験会場で見た受験生達の魔法を古代魔法で解釈して再現して見た。
才能ある人達の魔法はすごいなーとか言っている。
それらの魔法は新訳魔法大全としてまとめた。
クロウラ学園長が翻訳を依頼するとギドはうなづいてパッと消えた。
そしてパッと現れる。
多分インベントリからだろう写本や翻訳本を取り出して積み上げる。
手にとってページを開くとそれだけで魔力がサラサラと溢れて学園長長室に満ちるのがわかる。
クロウラ学園長は愛おしそうに写本に触れる。
「ありがとうマスターこれで世界が変わる。本当の魔法が世界に満ちるわ。」
ギドがさっさと部屋を出ようとする。
「マスター、どちらへ?」
「あー。うー。」
「教室に行かれるのですね。生徒たちの魔法を見る?」
指導をして頂けるのかしら?
でもギドは「あー。」とか「うー。」しか言わないし。
あぁ、教室にはレテルティアがいたはず。
何をするのか私も興味があるので見に行こうかしら。
この国でのオールドマスターウィザード(真正大魔法師)の地位は国王よりも上だが政治に関わることはない。
完全に自由だ。
元来、マスターになるような魔法師は魔法以外に全く関心がない。
魔法を探究し続ける事だけを生きる目的にしている。
だからマジタリア魔法国のどんな法律や組織もマスターの行動を制限したり、邪魔することは出来ない。
いかにも魔法国らしいしきたりだ。
ギドが教室に入ると微妙に生徒たちが緊張する。
「オールドマスターウィザードってなんだ?ドーナツの種類か?」
良くわかっていない子もいるようだがマスターは何も気にしていないようだ。
「ギドー。大丈夫なの?どこかに行ってしまうの。」
レテが目をうるうるさせて上目使いで見てくる。
可愛い。反則だ。
「あー。」
「そうなの?よかった。」
何にも言っていないけど。
教室で講義を受ける。
魔法と違って魔術はシステムがロジカルで複雑。
それはそれで面白いが。
こんな複雑で周りくどい魔力制御を当たり前のようにしているレテや他の生徒たちに感心する。
生まれついてそれが出来るというのは恐ろしい程の才能だと思う。
ギドがこの生徒達と同じに魔術を使えるようになるには多分また300年はかかる。
講義の後実技練習をしている生徒達を見て魔術の多様性に関心した。
結果は同じだけど魔法はもっと直感的でシンプルだ。
魔術は人それぞれに工夫され構築される術式や魔法陣と呼ばれる魔術回路が違う。
工夫の余地が沢山ある
すっごく面白い。
ギドはまたインベントリに300年程こもった。
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