闇の魔法師は暗躍する

yahimoti

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第3話 転生

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それは地上で溺れているかの様にひとしきりもがくと動かなくなった。

顔らしき位置に現れた目を開いた。

まだなんの意思もその目からは伺えない。

人の形となった影が立ち上がると空中に滲み出る様に着衣が現れて体を覆って行く。

真っ黒だが袖口などに細やかに金糸で魔法陣の様な模様が描かれて行く。

魔法師や魔術師が好んで着るフード付きのコートの様だ。

彼が立ち上がると祠の先には、いままで隠されていたかの様に草木が分かれて道が示される。

行手を遮っていた茨が道を開ける。

先の方へと道が伸びて行く。

半ば朽ちた古城が姿を現す。

主人の帰還を待っていたかの様に堀にかかる跳ね橋がゆっくりと降りてくる。

朽ちた門扉が勝手に開く。

バラバラになっていた甲冑がまとまり門兵として立ち上がる。

まるで息を吹き返した様に、城を覆う蔦や茨が退いて行く。

人の形をした者が城の中を歩いて行くと崩れかけていた内装が復元されて行く。

謁見の間にたどり着くと朽ちていた王座が復元される。

ぺたりとそれは王座に座る。

王座に座った少年の年齢は15歳ぐらい。

真っ黒な髪、赤い目、ちょっと不健康な青白い肌。

童顔だが栄養失調気味。

ちょっと頬がこけている。

「ふう。」

それは一段落ついたとでもいうようにため息をついた。

なんだ、ここは?

昨日は公園のベンチに座ってドブネズミ達を集めてダンスの指導をして遊んでいたのだが?

謁見の間にちっちゃな者達がチョロチョロと集まってくる。

「おかえりなさい。暗冥の王、闇の魔法師ペトロニウス・グローヴズ様」

既に謁見の間は再生して城としての荘厳さを取り戻している。

ちっちゃな者達は息を潜めて僕が何か言うのを待っている。

記憶がだんだん形になってくる。

あぁ僕はネズミ達にダンスを踊らせて調子に乗って車道に出てトラックにはねられたのか。

で神は面白がって僕の望む様な魔法師に転生させたのか。

こいつ達は僕の使い魔なのか?

「それで、なんだお前たちは。」

「私達は、えーっと。ペトロニウス・グローヴズ様の妻です。」

「ふーん、じゃあチェリ、ツッピ、テトこっちにおいでただいまのキスをしてあげよう。」

「チューッ!」

3人共しっぽをぴんと立ててびっくりしている。

バレてるじゃない。

名前、私たちの名前覚えてるし。

なんにも覚えて無さそうとかいったじゃない。

彼女達は人化すると大体17歳前後に見える。

丸い耳が頭についてヒョロリとしたしっぽがついている以外は普通に可愛い美人さんだ。

この子たちは獣人族ではない。

この城を建てた時に迷い込んで来たネズミに人化の魔法と知能を高める魔法をかけて使い魔にしてみたのだ。

今は耳を垂れて股の間に挟んだしっぽを両手でつかんで青くなっているけど。

「ばれてました?」

「何がかな。こっちにおいでよ,奥様方。」

3人がおずおずと僕の前に集まりひざまづいて、前足....じゃなくて右手を差し出してくる。

僕は3人を抱きしめて言う。

「長い事待たせたね。また楽しく暮らそうね。でも嘘つきには、お仕置きだね。」

3人のメイドはポンっと小さくなって3匹の白いネズミになった。

なんか必死になってチューチュー言っている。

しばらく人化は出来ないよ。 

「頑張れよ。ネコのおやつにならないようにね。」


ネズミの居場所といえばこの壁の厚みの中、とりあえずここならネコもイタチも入って来ない。

「ペトロニウスの薄情者めーっ。300年も復活を待っていたのに。」

チェリが地団駄を踏んで怒る。

「嘘をつくからよ。」

勇者が召喚された。

ミルグラス王国が魔王を滅ぼすために召喚したのだ。

世界に魔力が満ちて来た。

ペトロニウスもそれで目覚めたのだろう。

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